経済産業省が7月30日発表した6月の商業動態統計(速報)で小売販売額は前年同月比1.2%減と、5月(12.5%減)から下げ幅を縮めた。季節調整済みの前月比では13.1%増と、市場では「緊急事態宣言下の最悪期を脱した」(SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミスト)との声も出ている。象徴的なのがコンビニで、6月の売上高が前年同月比でプラスに転じた企業も。人との密接状態の回避に取り組んでいるのが、消費者の支持に結びついているようだ。
■「人数が少なく、滞在時間も短く済む」
商業動態統計を業態別に見ると、コンビニの商品販売額(前年同月比)は5.1%減と、4月(10.7%減)、5月(9.6%減)から減少幅を縮小してきた。経産省担当者は「キャッシュレス決済が好調で、客単価が増加した」と分析する。
コンビニで売り上げを早くもプラスに転換させたのがセブン&アイ・ホールディングス(3382)傘下のセブン-イレブン・ジャパンだ。大手コンビニ3社の6月の売上高(既存店、前年同月比)をみると、セブンイレブンが1.0%増、ファミリーマート(8028)が8.2%減、ローソン(2651)が5.8%減だ。
カギは人の密集の回避だ。全国スーパーマーケット協会の2020年版スーパーマーケット白書によると、コンビニ利用の理由として、スーパーとは異なる営業時間の長さやレジ対応の早さがあげられている。セブン&アイ・ホールディングスのIR・SR部担当者は「スーパーより店舗に滞在する人数が少なく、滞在時間も短く済むため人の密集を避けられる」とコロナ禍ゆえのコンビニの強みを分析する。
セブン&アイでは、来店客自身が精算機で決済する「お会計セルフレジ」を9月以降から順次、21年8月までに全国のセブンイレブンで導入する予定だ。感染症対策として人の密集を回避するとり組みを一層強化する考えだ。
■惣菜強化で中食取り込み
UBS証券はセブン&アイについて「外食からのシェア獲得につながる商品力向上や食品スーパーへのシェア流出を抑制する品ぞろえの改善に取り組めば競争力を回復する可能性があり、ニーズ対応が進めば株価のアップサイドは大きい」と分析する。セブン&アイの同担当者は「テレワークの定着で住宅街の店舗では中食需要を取り込もうと、総菜などの品ぞろえを強化し、6月の総菜売り上げは前年同月比でプラス」という。「密」の回避に加えた中食需要の取り込みが業績の本格回復に結びつくか。注目される。〔日経QUICKニュース(NQN)大貫瞬治〕