上海のハイテク新興企業向け市場「科創板」50銘柄で構成する「上証科創板50成分指数」の算出・公表から1週間。米中の対立激化への警戒から上値の重いスタートとなったが、年初からの上昇率(遡及値)は49%と、上海総合指数の8%を大幅に上回る。市場では科創板銘柄への一段の資金流入期待が根強い。
■「科創板」-時価総額は取引開始時の約5倍
科創板50指数の7月30日午前の終値は1490.6472と、算出・公表を始めた23日とほぼ同水準にある。遡及値でみると、今月13日に1721の高値を付け、年初来の上昇率は72%。足元では24日に7.0%安、29日に5.5%高となるなど値動きは荒い。
科創板が取引を開始したのは1年前。上場「第1陣」の25社の多くが今月22日に、ロックアップ(大株主による売却制限)の解除を迎えた。証券時報によると、同日の解禁分は1800億元以上と科創板の時価総額の6%。需給悪化の懸念も指数の重荷となっている。
習近平(シー・ジンピン)国家主席の肝煎りでわずか7カ月で創設された科創板は、上場社数が取引開始時の25から1年で141(29日時点)に増加。時価総額は約5倍の2兆7555億元になった。
■「科創板50指数」-ETFの準備も進む
指数は上海証券取引所と指数算出会社の中証指数が時価総額や流動性などを考慮して算出する。中国の興業証券によると、科創板50指数の構成銘柄は科創板の時価総額の6割弱、上場企業の売上高ベースではおよそ9割を占める。
指数のウエートの6割近くを占めるのが、オフィスソフトの設計・開発を手がける北京金山弁公軟件や半導体製造装置の中微半導体設備などのIT(情報技術)・ハイテク関連だ。約2割が医療機器を製造する南微医学科技などの医療関連となっている。半導体受託生産の中国最大手である中芯国際集成電路製造は時価総額が科創板で2位だが、7月に上場したばかりなので指数には採用されていない。
そもそも科創板は、米中がハイテクや金融分野でも対立を深めるなか、半導体やバイオテクノロジーなどの先端企業育成を後押しするために設立されたという経緯がある。中国国内の投資家の期待度は高い。
中国の国信証券は科創板指数の導入で指数に連動する金融商品が増え、「科創板上場銘柄への資金流入を促す」とみる。一部の運用会社はすでに指数に連動する上場投資信託(ETF)の準備を進めており、小口でも科創板への投資が可能になる。上海と香港の両取引所は科創板が香港市場との証券相互取引の対象になることで合意しており、海外からの資金流入も期待できそうだ。(NQN香港 林千夏)
<金融用語>
ロックアップとは
会社役員・大株主・ベンチャーキャピタルなどの公開前の会社の株主が、その株式が公開された後に一定期間、市場で持株を売却することができないよう公開前に契約を交わす制度のことをいう。