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アジア企業、新型コロナでデジタル化加速  「危機の準備」半数超 <HSBC1400社調査>

記事公開日 2020/8/3 13:59 最終更新日 2020/8/3 13:59 HSBC アジア サプライチェーン デジタル化 新型コロナウイルス レジリエンス


HSBC コマーシャル・バンキング部門アジア太平洋地域統括責任者のスチュアート・テイトが、最新のHSBCナビゲーター調査で明らかになったアジア企業の戦略変化についてリポートします。


アジア企業1400社を対象とするHSBCナビゲーター調査「Building Back Better(再構築による体質強化)」によると、新型コロナウイルスの影響でアジア企業は事業のレジリエンス(回復力)が試されており、特にデジタル化を早急に進展させる必要があると明確になった。

世界的な感染拡大で企業は自社のサプライチェーンの透明性とトレーサビリティ(追跡可能性)を高める必要に迫られた。新型コロナの感染拡大はサプライチェーンの脆弱性を改めて浮き彫りにし、企業は自社の在庫管理についてジャスト・イン・タイム方式から、万が一にの事態に備えるジャスト・イン・ケース方式に移行しつつある。

過半数が危機対応に十分な準備

パンデミックによって1929年の世界大恐慌以来、最悪となる世界的な景気後退が引き起こされた。今回のナビゲーター調査では4月から5月にアジアの主要7カ国・地域で1400社以上の企業から聞き取りを行った。この結果、アジア企業は2020年上半期の経験により、困難を乗り越える準備が整ったと感じていることが分かった。アジアでは半数を上回る企業が、(危機に対応するため)可能な限り十分な準備を整えたと答えており、この比率はアジア以外の地域をはるかに上回った。危機に対応する最高水準の準備を整えたことで、世界が新型コロナウイルスによる公衆衛生上の危機を克服した後に、アジア企業は大きな恩恵を受けるとみられる。

(危機に対応するため)どの程度の準備を整えたと考えているか? 

 

アジア

アジア以外

可能な限り十分な準備を整えた

55%

38%

HSBCのスチュアート・テイトは次のように分析する。「アジアの企業では、デジタル化は『進展が望ましい』という段階を越え、実現による恩恵を認識し始めた。これまでは新技術の導入に消極的な企業もあったが、新型コロナの感染拡大で変化を受け入れる必要性が誰の目にも明らかになった。業務プロセスのデジタル化により外部ショックへの対応策やレジリエンスを強化できる」

取引はデジタル化が標準に

アジア企業はアジア以外の企業に比べて、企業間の取引と決済処理のデジタル化が今後1~2年で標準的な手法になると考える傾向がある。これらの分野では、HSBCはブロックチェーンやAPI(ソフトウェアコンポーネント同士が互いに情報をやりとりするために使用するインタフェースの仕様)など技術の応用分野でリードしてきた。

今後1~2年間において優先順位の高い開発分野

 

アジア

アジア以外

企業間売買取引処理のデジタル化

40%

22%

企業間決済処理のデジタル化

38%

25%

今回の調査によると、アジアでは54%の企業が自社のサプライチェーンの透明性とトレーサビリティの向上に努めると回答している。アジア企業の3分の1超が、今後の問題発生に確実に対処可能となるようにサプライチェーンを構成する提携企業を見直すという。

サプライチェーンの改善

 

アジア

アジア以外

透明性とトレーサビリティを改善する

54%

22%

サプライチェーンを構成する提携企業を見直す

37%

25%

スチュアート・テイトは次のように述べている。「銀行は顧客だけでなく、その顧客が取引する相手も知る必要がある。企業も自社のサプライヤーだけでなく、サプライヤーに製品を供給している下請け企業について知ることが重要であると理解し始めている」

俊敏さや顧客本位が回復の条件

レジリエンスの高いビジネスの特徴について問うと、アジア企業は、3つの重要な特徴として俊敏さ、顧客中心主義、持続可能な方法での活動と回答した。レジリエンス向上にとって最大の障壁となるのは、十分なキャッシュフローや運転資本のコスト管理など財務の要因を挙げた。

今回の調査についてスチュアート・テイトは、こう結論付けた。「新型コロナの感染拡大はアジア全域の多くの企業にとって100年に1度の信じ難い災難だ。レジリエンスは企業の存続に直接関係している。企業が生き残り、繁栄するには、デジタル化の推進や、サプライチェーンの強化で、事業運営の方法を変更しなければならない」

HSBC ナビゲーター調査: 

ナビゲーター調査はHSBCに代わって、カンター(Kantar)が実施している。この調査は、広範な業種にわたる、中小企業から大企業までを含む2604社の意志決定者による回答をまとめたものである。回答者は当該企業の戦略的方向性に影響力を持つ、業務執行責任者(CEO・CFO・COOなど)、財務、調達、サプライチェーン、販売およびマーケティングなどの広範な職務に就く責任者が含まれる。全部で14カ国・地域の企業が2020年4月28日から5月12日までの期間に調査に協力した。

  • 南北アメリカ:カナダ、メキシコ、米国
  • アジア:オーストラリア、香港、インド、インドネシア、中国、マレーシア、シンガポール
  • 欧州:フランス、ドイツ、英国
  • 中東・北アフリカ:アラブ首長国連邦

結果は各国の貿易額(2017~2018年の世界貿易機関の統計)に基づいて加重されている。

 


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