米景気がまだら模様だ。先週末に公表された経済指標では生産の回復傾向が確認できた一方で、個人消費に不安感が台頭している。新型コロナウイルスの感染状況が実体経済を左右する構図そのものには変わりがないようだ。
■米鉱工業生産は3カ月連続上昇、自動車関連が大幅回復
8月14日に発表された7月の米鉱工業生産は前月比3.0%上昇とQUICK FactSet Workstationによる市場予想と一致した。6月の5.7%からは鈍化したものの、3カ月連続での上昇となり、コロナ危機からの回復が継続していることが確認された。前年同月比では8.2%低下とコロナ前の2月の水準には遠いが、5月以降の回復基調が揺らぐ雰囲気ではない。
内訳では製造業が前月比3.4%上昇し(市場予想の3.0%を上回った)、このうち自動車・同部品が28.3%と大きく上昇し指数を押し上げた。
■米小売売上高は感染再拡大懸念で伸び鈍化
14日に発表された7月の米小売売上高は前月比1.2%増とQUICK FactSet Workstationによる市場予想(2.0%)を下回った。6月の8.4%増から大きく伸びが鈍化した。前年同月比では2.7%の増加だった。
自動車・同関連部品の売り上げが前月比1.2%減少し、指数全体を押し下げた。変動の大きいこれらを除いたベースでは1.9%増と市場予想(1.5%増)を上回った。7月の8.3%増からの鈍化は鮮明で、新型コロナウイルスの感染再拡大の懸念で消費の勢いが鈍っている可能性があると慎重な見方が強まった。
失業保険の給付金が7月末で期限が切れることで今後の消費に対して悲観的な方向に振れている。ワクチン開発の進展や感染拡大減速などの先行きへの楽観的なニュースや、新たな失業者対策の実施によって消費マインドが楽観に揺り戻される場面にも備えておきたいところだ。
(QUICK Market Eyes 丹下智博)