※野村証券の松沢中チーフ・ストラテジスト
安倍晋三首相の辞任を巡って市場では、菅義偉官房長官を次期首相候補とし有力視されており、大幅な政策路線の変更が当面回避されるとみられている。ただ、野村証券の松沢中氏は「政策現状維持の評価は各市場で異なるため注意したい」と述べている。
■株式市場
株式市場では海外勢が売り越しているとみられることから、「現行政策の維持が株価にはポジティブに働き易い」という。最大のリスクは新政権が、「衆議院選挙において与党の勝利を引き込めない場合」で、そのときには、「来年秋の自民党総裁選での党首交代も視野に入れた市場展開になる」と述べていた。
■為替市場
為替においては現行政策において動因となるものが乏しいことから、「グローバルな要因で動く度合い」が強まるとみている。その上で「米国が景気・インフレ浮揚策として為替(ドル安)を利用する可能性があり要注意だ」と指摘する。また「トランプ‐安倍の蜜月関係もあって、これまで日本は例外的に米国との通商摩擦をかわして来られたが、政権交代後はその限りではない」とも指摘。特に「二階幹事長の影響から次政権が親中方向に政策の舵を切る(と米国に見なされる)様だと尚更だ」と述べていた。
■国債市場
国債市場は日銀が主たる買い手となって相場を形成してきた。このため「次政権下での日銀政策の変化次第で、市場が大きく動く余地を残している」という。黒田総裁が任期を2年半残しているものの「次期政権が日銀との関わり方を決めてしまえば、その間日銀政策が進む方向性を市場は織り込み始める」公算は大きい。
次期政権が1)財政拡張と日銀国債買入の協調(ヘリコプターマネー)か、2)円安誘導、への関心を強く示すのでなければ、金利面での追加緩和の芽が無くなり、「QE正常化を意識した相場になり易い」と述べていた。(QUICK Market Eyes 池谷 信久)