【QUICK Money World 辰巳 華世】衆議院選挙は「いつ?」なのか注目が集まっています。東京2020オリンピック・パラリンピックが終了する9月前半に首相が解散に踏み切るのか、それとも、9月末の自民党総裁の任期満了を経て、衆院議員の任期満了に伴う形で10月に選挙を行うのか・・・・。選挙は世の中に大きな影響を与える一大イベントであり、当然、株式市場にも大きな影響を与えます。今回は、選挙と株価という視点から、秋に予定されている衆議院選挙が株式市場に与える影響について考えてみたいと思います。
衆議院選挙の時期はいつ?
衆議院選挙の時期は、オリンピック・パラリンピックが終わった後、かつ9月末に迎える首相の自民党総裁の任期前、つまり9月前半に衆議院を解散しての選挙、または、9月末の自民党総裁の任期を経て、10月21日の衆院議員の任期満了に伴う形での選挙になるとの見方が多いです。注目は、東京オリンピック開催と新型コロナウイルスの感染拡大の状況です。
みずほ証券は、東京五輪がコロナ感染を増やさずに終わり、日本人選手も活躍すれば、「菅政権の支持率が回復し、9月5日のパラリンピック終了直後に衆議院を解散する可能性」とし、一方で、東京五輪中にコロナ感染が急増して、東京五輪が失敗だったとの評価が定着すれば、「菅首相は10月21日の任期満了まで追い込まれての衆議院選挙になる」との見通しを示しています(関連記事)。
ただ、足元では、新型コロナウイルスの感染拡大が続いており予断を許さない状況です。政府は8日、東京都に4度目となる新型コロナウイルスの緊急事態宣言を今月12日から8月22日まで発令しました。
予想される今後の選挙のスケジュール
株式市場では、オリンピック終了後の衆議院解散による選挙なった場合、選挙日は9月20日(9月8日公示)、9月27日(9月15日公示)、10月3日(9月22日公示)、10月10日(9月29日公示)、10月17日(10月5日公示)のいずれかになる可能性が高いとされています。
一方、10月21日の衆院議員の任期満了に伴う選挙となった場合、任期満了日前30日以内となるため9月27日(9月15日公示)、10月3日(9月22日公示)、10月10日(9月29日公示)、10月17(10月5日公示)のいずれかになりそうです。
いずれにしても、秋までに次期衆議院選挙が実施される予定です。
2000年以降の7回の衆院選のうち6回で日本株は上昇
衆議院選挙と株価の関係はどうなのでしょうか?大和証券の6月25日付けのレポートによると、2000年以降の7回の衆院選のうち6回で日本株は上昇(衆院解散前後6カ月間でTOPIXは上昇)しており、「今秋の衆院選は割安感の修正をもたらしうるイベントの1つとして注目」としています。
衆院解散日 | 解散60営業日前から60営業日後までの株価変化率(TOPIX) |
2000/6/2 | -7.6% |
2003/10/10 | 10.0% |
2005/8/8 | 33.4% |
2009/7/21 | 10.1% |
2012/11/16 | 25.9% |
2014/11/21 | 17.3% |
2017/9/28 | 13.7% |
過去の衆議院選挙ごとに政治や経済状況は異なるので一概に比べることはできませんが、それでも過去の経験は今後の投資において参考にはなります。大和証券はデジタル化等の構造改革や、円安、景気や業績の改善傾向といった類似点から、「敢えて選ぶと2005年の『郵政解散』」選挙を参考として挙げています。2005 年を振り返ると、衆院選前 の3カ月間よりも衆院解散後 3カ月の方がTOPIX の上昇率は大きく、解散後は金融業、不動産業、建設業といった内需の景気敏感セクターのアウトパフォーム が目立ったそうです。
SMBC日興証券は同日付のレポートで、仮にワクチン接種が9月に50%を突破した場合、同月と予想される衆院解散総選挙では自民党が勝利、その後の総裁選で菅首相続投が最も描きやすいシナリオになるとも指摘。近年、衆院解散後に日本株の上昇が開始、衆院選で自民党が勝利した後は株高に弾みが付く傾向があったことから、「(株価上昇のきっかけとして)軽視できない」と見ていました(関連記事)。
足元では、新型コロナウイルスのワクチン接種が広がりつつあります。菅首相は、6月9日の党首討論で「ワクチン接種について10月から11月にかけて希望する方すべてで終えることを実現したい」と表明しており、10~12月期以降の内需の回復が期待されます。
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前哨戦?都議会選挙の結果を受けた株式市場は…
7月4日に行われた東京都議会選挙で、自民党は予想より苦戦した結果となりました。自民党は、議席数を25から33に伸ばし第一党になったものの、目標としていた公明党を併せた過半数を獲得することができませんでした。この結果を受け、前週末2日の米株式市場でダウ工業株30種平均が過去最高値を更新したにも関わらず、5日の東京株式市場は下落しました。都議会選挙での苦戦から、秋の衆議院選挙で自民党が苦戦するとの見通しが高まっています。
注目ポイントはワクチン接種の進捗率と感染者数
新型コロナウイルスの感染状況だけでなく、選挙の時期を占う意味でも、今後、国内のワクチン接種の進捗率が注目されます。優先順位の高い医療従事者や高齢者向けのワクチン接種が7月末までに完了する目処がたち、最近は大規模接種会場や職場などで64才以下を対象にした接種が広がり、接種スピードが一気に加速しています。
ただ、ここにきて世界的なワクチン需要の高まりを受け、日本へのワクチン供給の遅れがでています。職場接種の新規受付の一時停止や、自治体でも予約のキャンセルなどが相次ぎ、接種スピードの先行きに不透明感がでています。
足元では、新型コロナウイルスのインド型(デルタ株)の感染拡大の懸念が高まっています。東京オリンピック開催による感染拡大も心配されます。これを受け、政府は今月12日から8月22日まで東京都に4度目となる新型コロナウイルスの緊急事態宣言を発令しました。
8日の緊急事態宣言発令に伴う記者会見で菅首相は、ワクチン接種について「先進国の中でも例のない速さで接種が行われている」とし、諸外国を例にしながら「ワクチン接種が人口の4割に達したあたりから、感染者数が減少してくる」とワクチン接種の普及に期待を示しました。今後の政局を占ううえでも、新型コロナウイルスのワクチン接種進捗率はカギとなり、感染者数の増減が注目されそうです。
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