9月7日の東京株式市場で、ソフトバンクグループ(SBG、9984)の下落率が一時6%を超えた。欧米メディアが「SBGが米ハイテク株のデリバティブ(金融派生商品)で数千億円規模の取引をしていることが分かった」と報じた。足元では、米ハイテク株相場が調整色を強めており、相場の逆回転による懸念がSBG株の重荷となっている。株価の先行きをどう見るか、市場関係者に聞いた。
■「取引の不透明を嫌気 市況連動の色彩強める」
岡三証券の小川佳紀日本株式戦略グループ長
デリバティブ取引に関しては実態がよくわかっておらず、取引の不透明感を嫌気した売りが出ているのだろう。新型コロナウイルスの感染拡大対応で、保有資産の現金化を進める一方で、米ハイテク株の保有やデリバティブ取引など、どういう方針で進めるのか見極めたいという投資家もいるとみている。
普通の企業の株式と違って、SBGはファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)が株価に反映されにくくなっている。例えば、トヨタ(7203)であれば、車が売れて業績が良くなれば、株価が上がるといったわかりやすい話。しかしSBGの場合、投資業が主力になっており、市況連動の側面が強い。足元のSBGの株安もひとまず、米国のハイテク株相場の調整が終わるかどうかだ。今回のオプション取引の報道もあり、今後の株価はいっそう市況連動の色彩を強めていくだろう。
■「米ハイテク株調整で収益悪化懸念」
ちばぎんアセットマネジメントの奥村義弘シニアアナリスト
ナスダック総合株価指数の調整などを受け、米ハイテク株を保有するSBGの収益悪化懸念が強まっている。米ハイテク株が調整している間は、SBGの株価も不安定な動きにならざるを得ず、静観を決める投資家も多いだろう。
米国の金融緩和を受け、米ハイテク株相場の上昇が続いてきた。多少の日柄調整は必要になるだろう。ただ、業績悪化などファンダメンタルズが変化したわけでもないので、中長期的な上昇基調は崩れるとはみていない。〔日経QUICKニュース(NQN)矢内純一〕
<金融用語>
デリバティブとは
金融派生商品。英語での通称、Derivatives(デリバティブズ)に由来する。外国為替、債券、株式など元になる金融商品(原資産)から派生した取引を指し、原資産の価値に依存してその価格・価値が決まる。 「先物取引」、「先渡し取引」、「スワップ取引」、「オプション取引」、さらにそれらを組み合わせた取引などがある。 原資産そのものを取引する場合、取引者同士の資金ポジションが移転すると同時に、それに随伴する様々なリスク(権利・義務などを含む)も移転する。一方で、デリバティブを利用した場合には、取引者の資金ポジションに変化なく、それに付随するリスクのみを抽出・分解して取引することが可能となる。デリバティブ取引を活用すれば多様な取引ニーズに対応できるようになる半面、複雑で高度なリスク管理技術が必要となる。