トランプ米大統領に対する女性からの不信感が高まっている。働く女性がコロナ禍で苦境に立たされるなかで行われた米大統領候補の討論会は非難合戦に終わり、米景気見通しは不透明なままだ。
9月27日発表の米紙ワシントン・ポストとABCニュースの世論調査によると、激戦区のペンシルベニア州で女性のバイデン前副大統領候補の支持率は61%とトランプ氏(33%)と差が開いた。同州は2016年の大統領選でトランプ氏がクリントン氏に勝利した経歴がある。
■女性支持率の差
トランプ氏の不人気の主因は、がんで亡くなったギンズバーグ最高裁判事の後任に、中絶や国民皆保険に反対する保守派のバレット判事を指名したことがある。最高裁判事は終身任期であるだけにトランプ再選を拒む女性は多く、今回の大統領選での男女の支持率の違いは「女性が投票権を獲得して以来、最大」(ワシントン・ポスト紙)と指摘される。
米ニュースサイトのスレートによると、90分間の討論会中にトランプ氏がバイデン氏や司会者の発言を遮った回数は128回と、16年のクリントン氏との初回討論会(51回)を超えたという。自身の経験を重ねた女性からの反発がSNS上に投稿され、多くの共感を呼んでいるという。
■女性の支援と景気
コロナ禍で苦境に立たされる働く女性にとって、次期大統領による支援は急務だ。米マッキンゼー・アンド・カンパニーが夏に北米で働く女性4万1000人を調査したところ、コロナ禍での育児負担などで5人に1人が離職を検討しているという。同調査を受け、フェイスブックのシェリル・サンドバーグ最高執行責任者(COO)は30日付の米紙ウォール・ストリート・ジャーナルへの寄稿で「200万人の女性の離職が見込まれ、過去6年間の女性進出がたった1年で吹き飛ぶ」と指摘した。
米議会予算局(CBO)は前週、向こう36年の年間の米成長率は平均で1.6%にとどまるとの見通しを示した。長期的な低成長の一因として少子化を挙げ、来年の女性1人当たりの出産人数は1.6人と低水準を予想。20年先の労働人口を押し下げる要因になる。ブルッキングス・インスティチュートの研究員であるメリッサ・カーニー氏は「コロナ禍とそれに伴う景気停滞で出産件数は30~50万減る」と指摘している。コロナ禍で苦境に立たされる女性が示唆する米経済の不安定さは、国債という安全資産への買いを誘いそうだ。(NQNニューヨーク=古江敦子)