【日経QUICKニュース(NQN)】10月14日の東京株式市場で、ソフトバンク(9434)株が反落した。終値は前日比3円(0.2%)安の1202円だ。日本経済新聞電子版は13日、「ソフトバンクは携帯電話料金で新たな大容量プランを導入する最終調整に入った」と伝えた。20ギガ~30ギガ(ギガは10億)バイトのデータ容量を月額5000円を下回る価格で提供することを検討するといい、値下げによる収益力の低下懸念が株価の重荷となっている。今回の新プランについて、アナリストの見方をリポートから抜粋した。
■野村証券の増野大作氏(13日付)
「減収インパクトは数百億円台後半を超えない水準か」
ソフトバンクのメインブランドのスマートフォン契約数は2020年3月時点で約1800万と推定できる。このうち、データ定額制(旧20ギガバイト/月プラン:データのみ月6000円を含む)が全体の約7~8割を占め、従来型携帯電話からスマートフォンへの移行向けの割安料金(1ギガバイト、5分/回以下の音声定額で月額1980円)契約が同1~2割を占め、残りがデータ従量制契約と推定できる。
今回の報道ベースでのシミュレーションでは、月20ギガ~30ギガバイトデータプランの新設は既存の月50ギガバイトや旧20ギガバイトデータプランからの移行を誘因するマイナス影響があるだろう。一方でデータ従量制プランからの移行促進や、セカンドブランドのワイモバイル(20年3月時点で約530万契約と推定)からソフトバンクへのアップグレード促進のプラス期待が持てるだろう。
このため、市場シェアが上昇しない前提で、携帯通信収入への減収インパクトは数百億円台後半を超えない水準となる可能性があろう。
■三菱UFJモルガン・スタンレー証券の田中秀明氏(14日付)
「4割値下げに満額回答の解釈も アク抜けでポジティブ」
現在、ソフトバンクは50ギガバイトのメリハリプランを月7480円(データ6500円+音声980円)で提供している。報道が事実であれば、大容量プランを細分化し、内外価格差調査で問題視された20ギガバイトプランでの値下げ要請に対応するということになりそうだ。
同報道の5000円以下を仮に4980円(データ4000円+音声980円)とすると、データ容量が20ギガ~30ギガバイトにおさまるユーザーは33%の値下げ、データプランだけで比較すれば38%の値下げ、つまり菅首相が言及する4割値下げ余地に対する満額回答といった解釈も可能だ。新プランを導入した場合、営業利益へのマイナス影響は10%未満(スマホ契約の10%がメリハリプランから新プランへ移行する前提)と推計する。さらにコスト削減・キャンペーン縮小によって営業利益への影響を軽微に留めることも可能と考える。
正式な発表を確認する必要はあるものの、同報道は株式市場にアク抜けを連想させる可能性があり、同社の株価にはポジティブとみる。
■SMBC日興証券の菊池悟氏(14日付)
「業績への影響はあまりない 新プランは全体の2割未満か」
ソフトバンクの業績に影響を与えない範囲で、今回報道があったような料金プランを出すことは可能と考える。ソフトバンクには20ギガ~30ギガバイトのプランはなく、値下げではないが、条件を付けてでも他キャリアより低いプランを出すことにより、値下げしたような印象を与えることができるだろう。
一般的に料金値下げの方法は、各キャリアがユーザー構成などを考慮して対象ユーザーを絞って低い料金プランを出すことだ。これにより、マーケティング効果と業績への悪影響の抑制を実現すると同時に、端末補助の削減やバンドル契約(固定通信、コンテンツサービス、電力など)を条件にすることで、値下げをオフセット(相殺)することである。
新しい料金プランを選択するユーザーは全体の2割未満と予想され、値下げを吸収する手段も用意されると考えられることから、業績に与える影響はあまりないだろう。また、ソフトバンクが強みとする大容量プランを充実させることは間違った戦略ではないだろう。50ギガバイトのプランはすでにあり、ローエンドユーザー向けの料金もワイモバイルブランドがあるから、こちらも充実している。