東証マザーズ指数が14日、前日比18.41ポイント(1.37%)高の1365.49で終え、2006年8月24日以来、約14年2カ月ぶりの高値を付けた。新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけにした働き方、生活様式の変化が上昇の背景にある。人々の行動の変化が商機につながる銘柄などを中心に投資家の物色意欲が強い半面、株式市場で先行き不透明感が強まっていることの裏返しと冷めた声も聞かれる。
■東証2部上回る時価総額
マザーズ指数は国内で新型コロナの感染状況が深刻化した4月ごろから上昇基調を鮮明にし、調整を挟みながらもほぼ右肩上がりの相場を継続。5月20日には時価総額が東証2部を初めて上回った。10月12日に初の10兆円の大台に乗せると、ジャスダック市場(スタンダードとグロースの合計で9兆9781億円)の時価総額も初めて逆転。同じ新興市場ではあっても「古株」の目立つジャスダックに比べ、マザーズはIT関連銘柄や創薬ベンチャーなど成長期待の大きい企業が多く、コロナ禍のもとで投資家の関心を集めている。
いちよし証券の宇田川克己投資情報部課長は「今回は相場の主役が分散している点が、過去のマザーズ指数の急上昇局面と比べて異なっている」と指摘する。従来はごく限られた一部の業種が人気化して全体相場をけん引するケースが多かったが、今回はIT関連銘柄とバイオ関連銘柄、それから直近IPO(新規株式公開)銘柄の3つの柱が相場を支えているとみる。
■利食い後も好循環
株価上昇によるキャピタルゲインで利益を出した個人投資家が、また別の物色の柱に資金を振り向ける好循環が生まれている格好だ。9月に菅義偉首相が誕生したのもマザーズ指数の上昇に拍車をかけた。菅氏が政権の旗印に掲げるデジタル化推進を材料視し、コロナ下でかねて株価が上昇してきた電子商取引(EC)のプラットフォームを手掛けるBASE(4477)や、電子署名サービスを提供する弁護士ドットコム(6027)は一段高となった。
いちよし証券の宇田川氏は「年末に向けて新規上場が活発化する例年の傾向を踏まえても、柱の1つである直近IPO銘柄は12月にかけて一段と盛り上がりそう」とし、「マザーズ指数にはまだ上値余地がありそうだ」と予想する。
もっとも、足元のマザーズ銘柄の物色については、東証1部などの主力株を積極的に手掛けられない裏返しとの見方もある。米大統領選への警戒感が根強いほか、コロナからの世界景気の回復度合いも楽観できない。マネックス証券の広木隆チーフ・ストラテジストは景気敏感株が敬遠される中で「結果として海外情勢の影響を受けにくい新興市場の銘柄に資金が向かった」とみる。
軽快に上値追いを続けるマザーズ指数とは対照的に、日経平均株価は2万3000円台後半で上値を抑えられる展開が続く。マザーズ銘柄の人気が海外情勢の不透明感の強まりを色濃く映しているのだとすれば、なかなか手放しでは喜べないかもしれない。
■マザーズの時価総額ランキング
銘柄名(コード) | 時価総額 |
メルカリ(4385) | 9019億円 |
フリー(4478) | 4450億円 |
ラクス(3923) | 3825億円 |
弁護士COM(6027) | 3421億円 |
BASE(4477) | 3147億円 |
JMDC(4483) | 2852億円 |
Sansan(4443) | 2338億円 |
AIins(4488) | 2210億円 |
マネフォ(3994) | 2137億円 |
メドレー(4480) | 2063億円 |
※14日終値時点。
〔日経QUICKニュース(NQN) 内山佑輔〕