クラウド会計ソフトや家計簿アプリケーションなどを手掛けるマネーフォワード(3994、マザーズ)が10月15日にオンラインで開いた2019年12月~20年8期(第3四半期)連結決算の説明会では「成長」「グループジョイン(傘下入り)」「プロダクト」などが焦点になっていた。説明会の内容をテキストマイニングし、分析した。
19年12月~20年8月期の売上高は、前年同期比61%増の79億円だった。20年6~8月期は、金融機関向けなどの一時的な売上高であるフロー収益が前四半期比で若干減少したものの、法人ユーザーの獲得が進み、継続的な売り上げであるストック収益が20年3~5月期の2.1倍と大きく成長した。
辻庸介社長兼最高経営責任者(CEO)は、好調な法人ユーザー獲得をさらに加速させるため「テレビCMを含む大型マーケティング投資を20年9~11月期に実行していく」として、20年11月期の最終損益は27億~36億円の赤字になるとの見通しを据え置いた。
ストック収益の急成長に貢献したのが、クラウド型の入金消込(入金明細の確認)サービスで国内シェア9割のR&AC社の子会社化だ。R&AC社の「V-ONEクラウド」は中堅企業から大企業まで500社以上が導入している。既存サービスとの相性も良く相乗効果が期待できるという。
上場後に5社をM&Aした。辻社長兼CEOは「手探りながらPMI(買収後の統合作業)のノウハウ(の習得)が加速してきた」と強調、傘下入りした企業の経営陣がグループの経営に参画することで「かなり経営力が強化されている」ことを強みの一つに挙げた。
顧客層に合わせたプロダクトの強化も進めており、新たに「マネーフォワードクラウドERP(統合基幹業務システム)」を開始した。財務会計から人事管理、労務手続きなどの基幹業務を低コストで一元管理でき、中小企業などの「バックオフィスの生産性の飛躍的向上を目指す」(辻社長兼CEO)と自信をのぞかせた。
アナリストやマスコミの質問では同業他社に対する強みに関心が集まった。金坂直哉最高財務責任者(CFO)は、 会計ソフトを手掛けるフリー(4478、マザーズ)との違いについて「(フリーは)確定申告など個人事業主向けが非常に強いとみており、逆に私どもでは中小企業向けや会計事務所向けが強い」と説明した。(QUICK Market Eyes 阿部 哲太郎)