外貨建てMMF(マネー・マーケット・ファンド)の繰り上げ償還が今年になって相次いでいる。10月22日には「ノムラ・グローバル・セレクト・トラスト – NZドル・マネー・マーケット・ファンド」が繰り上げ償還された。世界的な金利低下で投資環境が悪化し、運用が難しくなっていることが背景にある。
22日に繰り上げ償還されたのは、ニュージーランド(NZ)ドル建てのMMF。繰り上げ償還の理由について、管理会社であるグローバル・ファンズ・マネジメントが挙げたのは、NZ準備銀行(中央銀行)による利下げだ。NZドル建ての短期金利の低下基調が続く見通しで、「当ファンドの資産残高は低水準にとどまっているため固定費用の負担が重く、このような低金利環境下において元本の安全性に配慮しながら運用を維持することが困難」と説明した。
このほかにも、5月28日に「ニッコウ・マネー・マーケット・ファンド -カナダ・ドル・ポートフォリオ-」、6月30日に「ダイワ外貨MMF(カナダ・ドル・ポートフォリオ)」、9月30日には「ダイワ外貨MMF(オーストラリア・ドル・ポートフォリオ)、(ニュージーランド・ドル・ポートフォリオ)」がそれぞれ繰り上げ償還した。
繰り上げ償還した3通貨の国は2019年から政策金利が低下傾向にあり、20年3月には新型コロナウイルスの感染拡大を受けて緊急利下げに踏み切った。足もとの政策金利はそれぞれ、過去最低水準となっている。MMFは公社債やコマーシャル・ペーパー(CP)などの短期証券に投資するため、政策金利が下がると運用益や流動性の確保が難しくなる。
外貨建てMMFの繰り上げ償還で記憶に新しいのは、欧州債務危機によって不安が高まった2012年。金利がマイナス圏に低下し、ユーロ建てMMFの繰り上げ償還が相次いだ。国内でも2016年に日銀がマイナス金利を導入した際には、円建てMMF(マネー・マネジメント・ファンド)も全て繰り上げ償還した。今回のコロナ禍で世界的な金利低下に拍車がかかり、低リスクの運用ニーズに応える金融商品の存続が再び危うくなっている。