【QUICK Market Eyes 弓ちあき】10月末を基準日とした優待の権利確定日が10月28日に迫る。社数は33社と少ないものの、人気の食品系からギフト券と、幅広い業種が並んでいる。ちなみに、配当と優待を金額換算した利回りで見ると、トップは「メガネスーパー」など眼鏡専門店を展開するビジョナリーホールディングス(9263、ジャスダック)で、次いで老人ホーム運営のロングライフホールディング(4355、同)、携帯電話販売のトーシンホールディングス(9444、同)と、ジャスダック上場銘柄が上位に入った。
■自社サービス利用と連携
ビジョナリーの優待は100株以上を保有する株主を対象に、自社の店舗で使えるメガネレンズ仕立券や検査コースのチケットなどが株数や保有期間に応じてもらえる。ロングライフは200株以上を2年以上継続保有する株主を対象に老人ホームなどへの入居一時金や入園金が10万円割引になる優待を実施しており、利回り換算した場合に高めになりやすい。トーシンHDは100株以上を保有する株主を対象に携帯電話などの購入割引か商品券に加え、株数に応じてゴルフ練習場やゴルフ場の利用に関連する優待を実施している。いずれも自社サービスの利用と結びつけていることが特徴と言えそうだ。
ただこれら優待は、眼鏡利用者だったり、老人ホームの入居を考えていたり、ゴルフを趣味としている場合など、個人の生活スタイルや趣味などによって利用機会は大きく差が出る。ちなみにロングライフは20日に優待内容の変更を発表した。入居一時金の割引と併せて実施していたレトルトカレー(8箱)の贈呈は見送る方針を示し、翌21日には株価は8.8%安と急落している。一定数の株主には融通の利く優待品目的の保有もあったとみられるほか、権利確定の直前の見直しとなったことも影響が大きく出やすかったようだ。
■回復は二極化
ちなみに10月優待銘柄の新型コロナウイルスによるマイナス影響からの株価の回復度合いを見ると、二極化の傾向が強い。飲食チェーンや旅行関連などを中心に株価の回復が遅れている。
新型コロナによる株価急落前の2月21日との比較では、下落率がもっとも高かったのが豆腐料理などのチェーンを展開する梅の花(7604、2部)だ。9月の飲食事業の既存店売上高は前年同月比30.6%減と、回復力の鈍さがやや目立つほか、テイクアウトが前年割れとなっていることも気がかりだ。個室が多く宴会や祝い事などに使われやすいことも、集まりを避ける昨今の状況ではマイナスに働きやすいのだろう。旅行大手のエイチ・アイ・エス(9603)も8月までの旅行総取扱高は9割超の減少が続いており、9月以降にどの程度まで水準が切り上がってくるか見極めたいとの向きが多いもよう。
オフィス系REIT(不動産投資信託)のいちごオフィスリート投資法人(8975)や総合型REITの投資法人みらい(3476)も振るわない。いずれも年ベースの利回りは5~6%強の高水準に切り上がっているものの、分配金の水準が保たれるかなど不透明感を意識する向きが多いようだ。長い目で見れば投資妙味は増しているとはいえ、新型コロナ前とは収益環境が変わったり、収益水準を取り戻すのに時間がかかったりする企業もあることは引き続き頭の隅に置くべきだろう。
■新設・廃止の動きも活発
10月に入り、引き続き新設の動きもみられる一方で、廃止の動きも活発だ。優待内容を微修正する動きも目立っているため、注意したい。
11月末を基準日に北海道の名産品を贈呈する優待を設定しているテーオーホールディングス(9812、ジャスダック)は、2期連続での中止を決定した。業績の立て直しを優先するためと見られるが、「中止」という表現では保有を継続するべきか否かで迷う投資家も多いだろう。2020年度の復活を期待して保有し続けてきた投資家には失望感もある上、21年度の状況も見極めにくい。「できれば継続したい」との会社側の気持ちは理解できるものの、実施が不透明な状況が続くのであれば一度明確な「廃止」に踏み切る必要もあるのではないか。