【NQNニューヨーク 川内資子】ソフトウエア大手のマイクロソフトが10月27日夕に発表した2020年7~9月期決算は純利益が前年同期比30%増の138億9300万ドルと四半期ベースで過去最高となった。減速懸念も浮上していたクラウド事業が好調を維持し、収益をけん引した。決算説明会で示した10~12月期の売上高見通しが市場予想に届かず、27日の米株式市場の時間外取引で売りが優勢となったものの、株価の先高観測は崩れていない。
■クラウド関連が収益拡大をけん引
7~9月期の売上高は前年同期比12%増の371億5400万ドルとQUICK・ファクトセットがまとめた市場予想(357億5900万ドル)を上回った。クラウドの「Azure(アジュール)」が48%増えたほか、ゲーム関連が30%増、パソコン「サーフェス」が37%増と堅調だった。特別項目を除く1株利益は1.82ドルと市場予想(1.54ドル)を大きく上回った。
決算はクラウド関連が収益拡大をけん引するとの期待をつないだ。1~3月期まで数四半期に渡り増収率が60%前後で推移していたアジュールは4~6月期に47%に急減速し、伸び悩みが懸念されていた。だが、7~9月期は伸び率が市場予想(43%)に反して4~6月期より拡大した。
アジュールに加え、ビジネス対話アプリ「チームズ」も含む法人向けのクラウド関連全体でみても売上高は31%増の152億ドルと初めて全体の4割を上回った。増収率も4~6月期(30%)から上昇した。この分野の売上高総利益率は71%とここ数四半期(66~67%)を上回った。エイミー・フッド最高財務責任者(CFO)が「クラウドに対する高い需要により21年6月期通期は力強いスタートを切った」と強調したように、マイクロソフトの屋台骨を支える事業だ。
■成長はまだ初期段階
アジュールに関して、市場では今後も安定した収益増が見込めるとの期待も強い。RBCキャピタル・マーケッツのアレックス・ズキン氏は「アジュールの顧客の関心が単純なデータのクラウド移行から、クラウド上のシステム構築に移り、顧客の定着が見込めるようになってきた」と指摘する。在宅勤務の普及などを背景に導入が進んだアジュールが利益率の高いサブスクリプション(定額課金)などの収入を呼び込めば、クラウド事業の成長はまだ初期段階にあるとの解釈も成り立つ。
マイクロソフトが決算説明会で示した10~12月期の全体の売上高見通しは395億~404億ドルと中心値(399億5000万ドル)は市場予想(404億ドル)をやや下回った。この見通しが伝わると、もみ合っていた株価は明確に下げた。
ドイツのソフトウエア大手SAPが25日、欧米でのコロナの感染再拡大を理由に20年12月期通期の売上高見通しを下方修正するなど、クラウド需要の懸念は確かにある。だが、マイクロソフトの7~9月期決算を見る限り、四半期ごとに収益の振れはあっても、クラウドが収益と株価を中長期的に押し上げるとのシナリオは簡単に揺るぎそうにない。