日本電産(6594)が10月26日にオンラインで開いた2020年4~9月期連結決算(国際会計基準)の説明会では「トランクションモーター(駆動用モーター)」「マーケットシェア」「ACIM(家電・商業・産業用モーター事業)」などが焦点になっていた。説明会の内容をテキストマイニングし、分析した。
20年4~9月期は、売上高が前年同期比0.1%増の7517億円だった。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で4~6月期は減収だったものの、7~9月期は四半期ベースで過去最高となるなど急回復した。「巣ごもり消費」の追い風でデータセンター向けHDD用モーターが好調で、ノートパソコンなどに使う超小型モーターの出荷が過去最高になった。
営業利益は同12%増の691億円だった。サプライチェーン(供給網)の見直しなどでコスト削減も進み、営業利益率は7~9月期に10%と4~6月期に比べ2ポイント改善した。経済活動の再開で工場の操業も回復しており、21年3月期の見通しも上方修正した。
説明会で関潤社長はモーターとギア、インバーターなどを組み合わせたトランクションモーターシステムの「E―Axle(イーアクスル)」の中国での急回復について「昨年9月が月あたり4000台、これに対し今年の9月はすでに8000台を超え100%以上の伸びを示している」と説明した。欧州市場でも「7~9月は7~8割の伸び」といい、今後の成長への自信をのぞかせた。
関社長は「2024年にはバッテリー単価が、従来のワット当たり14円から10円まで落ちる」という中国自動車技術研究センター(CATARC)が6月に発表した内容を紹介し、2024年にはEV(電気自動車)の駆動システムのコストがガソリン車を下回る見通しを示した。そのうえでイーアクスルについて「40~45%程度のマーケットシェアを2030年にとれる」と強調した。
永守重信会長兼最高経営責任者(CEO)は、家電などのACIM事業について在宅時間の増加で省エネ家電やノートパソコン向けファンモーターなど「ウィズコロナ」の時代ならではの需要に繋がっているとして「HDDの技術で培った過去の軽薄短小の技術がいろんなところに応用されて、非常に堅調な需要を醸し出してきている」との認識を示した。
アナリストやマスコミの質問ではトラクションモーターの見通しに強い関心が集まった。永守会長は同事業について「50年計画でやっている」と指摘し、製品としてあるべき利益率については「30%ですよ、営業利益」と高収益事業に育てる決意を表明した。「50年近くモーターをやってきて大きな投資ができて、技術をそれだけ持っている会社は、世界を見たってないでしょう」と強調し、EVの本格普及に伴って成長していくシナリオを描いていた。(QUICK Market Eyes 阿部 哲太郎)