新型コロナウイルス禍で様々なイベントやコンサート、スポーツ観戦などが中止や延期、または制限付きでの開催を余儀なくされている。このような中、人気アニメ「鬼滅の刃」の映画が10月16日に公開された。公開初日から3日間の観客動員数は342万人を超え、興行収入も46億円を突破したとの喜ばしいニュースがエンターテインメント(エンタメ)業界に届いた。
■東宝、映画「鬼滅の刃」ヒットで株価が急回復
本寄稿執筆時の10月22日時点でも興行収入は増え続け、邦画の興行収入歴代1位の「千と千尋の神隠し」をも上回りそうな勢いだ。同映画の配給会社である東宝の株価は新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化した2月以降に急落し、その後も低迷していたが、8月後半に急速に持ち直した。一時6000億円を割り込んだ同社の時価総額は8000億円台を回復している。
■米国では新興・老舗エンタメ企業がデッドヒート
太平洋を越えた米国では、コロナ禍の中、時価総額のデッドヒートが繰り広げられている。定額制動画配信サービスのネットフリックスと総合エンタメ会社のウォルト・ディズニー・カンパニー(以下、ディズニー)だ。
米国でコロナ感染拡大が深刻になった3月に入ると、外出制限や都市封鎖による「ステイホーム」が広がり、ネットフリックスが提供する動画配信サービスへの需要が高まった。一方、ディズニーは映画館が全米各地で休館に追い込まれ、予定されていた映画公開も延期が相次ぐ中、テーマパークも休園となるなど事業環境は悪化した。
このような中、3月下旬にネットフリックスの時価総額がディズニーの時価総額をついに上回った。新興企業のネットフリックスが圧倒的な老舗の存在感を放つディズニーを企業価値で追い抜いたのである。
しかし、ディズニーの底力は侮れない。経済活動の再開とともに同社株価も回復ペースを示し、10月22日時点ではディズニーの時価総額はネットフリックスの時価総額をわずかながら上回っている。両社の株価は引き続き新型コロナの感染状況に大きく影響を受けるであろう。そのため、しばらくの間、この時価総額のデッドヒートは続くのではないだろうか。
それでは、ネットフリックス、ディズニー、そして東宝のサステナビリティー力をアラベスクS―Rayのスコアでチェックしてみたい。
■GCスコアはディズニー、ESGスコアは東宝が高得点
3社の年初と10月21日時点の各スコアを比較してみた。
10月21日時点では、国連グローバルコンパクト(GC)の原則に基づいて企業を評価するGCスコアは3社の中でディズニーが最も高く、ESGスコアは東宝が高い結果となった。東宝は、企業統治のスコアが62.9と高い。同社の企業統治のスコアの詳細をみると、サステナブル経営を推進していく上で重要な資本構造が非常に優れている。有利子負債が低く抑えられており、時価総額が安定している。
一方、ネットフリックスは全般的にスコアが低い。コロナ禍の影響で急成長した企業の多くに共通することであるが、ESG関連の情報開示に十分なリソースを割けていないと思われる。ディズニーと時価総額のデッドヒートを繰り広げる企業ということで、同社を評価する投資家の目も一層厳しくなるだろう。ネットフリックスの今後のESG対応に注目したい。
ディズニーは3社比較ではスコアは高いが、年初からスコアを大きく落としている。時価総額ではネットフリックスを再度逆転したとはいえ、株価そのものは年初の水準を1割下回っている。新型コロナやBLM(ブラック・ライブズ・マター)関連の対応などが大きく影響したと思われる。同社のスコアの詳細をみると、企業倫理、人権、報酬等のスコアが年初から大きく低下した一方、世界各地でテーマパークを運営しており、環境面のスコアは高い水準を維持している。コロナ禍、BLMなど世界共通の問題解決にディズニーの持つ世界レベルのブランド力を活用してもらいたい。(アラベスクS-Ray社日本支店代表 雨宮寛)
雨宮 寛(あめみや・ひろし)
アラベスクS-Ray社日本支店代表。アラベスク・グループの日本事業の責任者。アラベスク以前は外資系金融機関で運用商品の開発に従事。CFA協会認定証券アナリスト。一般社団法人日本民間公益活動連携機構アドバイザー、明治大学公共政策大学院兼任講師。NPO法人ハンズオン東京副代表理事。ハーバード大学ケネディ行政大学院(MPA)、コロンビア大学経営大学院(MBA)。