【QUICK Market Eyes 阿部哲太郎】米製薬大手のファイザーが9日に新型コロナウイルスのワクチンの治験で予防の有効性が90%を超えたとする初期データを発表し実用化への期待が高まった。これを受けて東京株式市場では、これまでコロナの感染拡大で売られていた銘柄に目が向かいやすい。その中で注目したいのが音響・映像機器のヒビノだ。
■コロナショックからのリカバリー期待
ファイザーの良好なコロナワクチン開発の一報を受け、11月10日の上昇率上位には、旅行比較サイトのオープンドア(3926)やスポーツクラブ運営の東祥(8920)、インバウンド関連のブランド菓子の寿スピリッツ(2222)、アミューズメント施設のラウンドワン(4680)などがランクインした。コロナショックで売り込まれていた銘柄に対する「リカバリー期待」が急速に高まった。
■規制解除に期待
ただ、足元では11日に国内の新型コロナウイルスの感染者が午後8時までに、新たに1521人確認され、死者数は減少傾向にあるものの感染第3波を警戒する声も出ている。コロナワクチンについてもファイザーのワクチンを日本政府はを6千万人分供給を受けることで基本合意しているが、生産や輸送の問題など実際の供給には、問題が山積している。
イベントやコンサートの開催について収容人数が1万人を超える場合は定員50%以内に抑える制限を21年の2月まで継続する方針となっている。大手音楽事務所のエイベックス(7860)の2020年4~9月期(第2四半期)の連結最終損益は32億円の赤字となった。音楽ライブの開催の取りやめで業績が悪化。希望退職の募集や本社ビルの売却なども視野に入れ財務体質の改善に動く。芸能プロダクションのアミューズ(4301)も20年9月末の中間配当を無配とした。
株価には相当程度織り込みが進んでいることとみられる。また、これまで人数制限によって開催されたイベント・コンサートでは、大規模な感染の事例は報告されていない。会場入口での検温・消毒の徹底、規制入場や退場などの運営のノウハウも積みあがっていることから先行きにかけては、段階的な規制解除による業績の底入れに期待している。
■音響・映像機器のヒビノに注目
中でもイベント・コンサートの音響・映像を手掛けるヒビノ(2469、ジャスダック)に注目している。同社はイベントやコンサートなどの大規模施設で使われる業務用の音響機器や映像機器の販売やレンタルを手掛けている。大規模施設の音響機器の施工なども請け負う。
機材まわりだけでなく、イベント・コンサートの開催時の音響・映像機器の設営や運用も手掛けている。家庭用と違い、業務用の機器は高額のため、レンタルなどのニーズも高い。また、設営や開催当日の運用についても設置位置や設定などのノウハウが必要なため、経験豊富な技術者やオペレ―ターを派遣できる同社の需要は高い。
2020年3月期には、主な案件として「嵐 ドームツアー」「ONE OK ROCK ワールドツアー/アリーナツアー」「東京オリンピック・パラリンピッ ク関連イベント」「皇室行事」「第46回東京モーターショー2019(トヨタ、スバル他)」など国内での主要イベントの音響設備運営に関わっている。先々イベント・コンサートの再開期待が高まれば、物色が続く可能性がありそうだ。
いちよし証券では、10日付のリポートで6日発表の20年4~9月期(第2四半期)は、売上高が前年同期比35%減の125億円、30億円の営業損失と苦戦したものの想定通りの着地とした。10~12月期(第 3 四半期(20 年 10-12 月)も事業環境は厳しいものの、イベント関連の人数制限が緩和されるなど動きは出つつあり、4~9月期が業績のボトムと見ている模様。22年3月期に向けては、規模の縮小など五輪の開催の動向がポイントとなるとしつつ、格付けは最上位の「A」、目標株価は1500円を据え置いた。
<金融用語>
格付けとは
格付けとは、国や企業の発行する債券の信用力や元利金の支払い能力の安全性などを総合的に分析しランク付けしたもので、アルファベットなど分かりやすい記号で示される。 格付けは民間の格付け会社によって行われ、投資をする際、信用リスクを測る重要な指標のひとつとなる。ただし、格付け会社によって格付けに差があったり、経済状況に応じて格付けが見直されたりする場合もある。 個別の債券やその発行体の債務全体に対する評価に加え、金融機関に対する預金や保険金の支払い能力の格付け、ストラクチャードファイナンス商品(仕組債など)や投資信託についての格付けも行っている。