コロナ禍に見舞われ、世界の金融市場が動揺した2020年。複数の資産に分散投資していても、不安になった投資家は少なくない。そこで、今回はバランス型の国内公募追加型株式投資信託(ETF、DC専用、SMA・ラップ専用除く)について、コロナショックでの下落率が小さかった順にランキングしてみた。相場環境によって機動的に資産配分を変えて運用するタイプのファンドが上位に並んだ。
■首位はSOMPOアセットの「きんとう君」
下落率の算出方法は19年12月末時点の基準価額(分配金再投資ベース)を起点に、コロナショックによる最安値を比べた。参考までに、配当込み東証株価指数(TOPIX)は3月16日に付けた最安値まで28.14%下落した。
最も下落率が小さかったのはSOMPOアセットマネジメントが運用する「日米4資産スマートバランス<愛称:きんとう君>」のマイナス0.96%(3月19日時点)。年初から3月上旬にかけて上昇していたため、19年12月末と比べるとほとんど値下がりしなかった。コロナショック後も安定的な運用を続けており、1~9月の騰落率は小幅のプラスになった。
このファンドは主に日米の株価指数先物と債券先物、先進国の国債に投資し、ファンドのリスク水準を年率4%程度にすることを目指して運用する。株式と債券の値動きが概ね均等になるように組み入れ比率を変えるリスク・パリティ運用や、日本と米国の金融市場の緊張度合いで株式先物取引の買い建て額を調整する機動的な運用など、リスクを抑えるために複数の手法を用いる。
■「投資のソムリエ」、回復力で優位
6位の「投資のソムリエ」はショック時の下落を抑えつつ、その後の回復局面でも堅実に成績を伸ばした。1~9月の騰落率は3.1%と10本中で最も高く、回復力が際立った。3月に付けた最安値から9月末時点の上昇率は5%を超えた。国内外の公社債、株式、不動産投資信託(REIT)など8資産に投資するファンドで、相場環境や資産価格の変動要因を判定し、資産配分比率を機動的に変更する。
月次レポートをさかのぼって見てみると、3月末時点ではリスク性資産を15.0%に減らす一方、現金などの比率は30%超に増やした。9月末時点ではリスク性資産を30.7%まで戻し、現金などの比率を6.5%に落としている。
■ショック後の運用成績、機動力で差
上位10本中6本は、1~9月の騰落率がプラスだった。配当込みTOPIXと比べると下落率をかなり抑えたのに加え、その後の相場回復局面でもそれぞれ健闘したといえる。一方、このランキングに入らなかったバランス型の中には、分散投資の効果でショック時の大幅な値下がりを回避したものの、戻り局面で出遅れたファンドもあった。ショック後に運用成績を伸ばしたバランス型は、資産配分を機動的に入れ替え、値上がり益をうまく取り込んだタイプだった。
(QUICK資産運用研究所=望月瑞希)