【QUICK Market Eyes 大野弘貴】24日の米ダウ工業株30種平均は初めて3万㌦を突破した。日経平均株価の上昇に弾みがつきそうだが、この先はどこまで上がるのか。証券会社のストラテジストからは引き続き強気な見通しが聞かれる。
■コロナ前織り込みで日経平均株価は2万8000~9000円までの上昇も=JPモルガン証
JPモルガン証券は20日付リポートで、「ハイペースでの株価上昇にはソロソロ歯止めがかかる可能性が想定される」との見方を示した。
(1)米大統領選通過、ワクチン開発と言った大きなカタリストが既に顕在化した点、(2)足元での世界的なコロナ感染再拡大を受け、欧州中心に経済指標の弱含みが想定される点、(3)来期にかけての企業業績回復、業績予想リビジョンの改善を当て込んだとしても、バリュエーション面での上昇余地が乏しくなっている点――が挙げられた。
それでも、中長期で見ると、(1)良好な需給環境、(2)景気回復基調の継続、(3)経済・企業業績正常化への期待が一段と高まる可能性――があるとも指摘し、大幅な調整には至らず、来年前半にかけて株価の上昇基調は維持されるとの見方も示されている。
その上で、最終的にコロナ・ショック以前に市場が想定していた2021年度予想EPS(1株利益)を織り込みに行くのであれば、TOPIXは1900~1950、日経平均株価は2万8000~9000円程度までの上昇も想定された。
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■21年の日本株に「強気」=SMBC日興
SMBC日興証券は20日付リポートで、2021年末に日経平均株価は2万8500円程度の高値を付けると予想した。ワクチンの到来によってマクロ経済が強く回復する一方、危機時に導入された財政・金融政策が据え置かれ、両者の方向性にかい離が生じると指摘。特に中小企業中心に失業者が多数残っている下、拙速な政策サポートの解除は想定されないとの見方も示された。
加えて、製造業サイクルが上向きの間は日本株のEPS(1株利益)が欧米を凌駕する傾向が強いとして、18年以降続いた日本株アンダーパフォームの局面が転換するとの予想も示された。
物色面については、(1)今期・来期とも2桁増益を維持できるグロース株は引き続きホールドすることが妥当、(2)バリュー株というよりも、競争力が劣化しておらず、景気が回復すれば素直に業績が回復する景気敏感株を取り入れる、との姿勢で臨むのが適切とのストラテジーも示されている。
一方で、今回は過去の多くのリセッションと異なり、事前に設備投資や消費の過剰が発生しておらず、金融機関の財務は遥かに健全であることから、通常起こるバランスシート調整が発生する余地がほとんどないとも指摘。その状況下でワクチンが配布され、短期間で強い需要が発生した場合、「何が起こるか分からない側面がある」とし、「21年は『異例の実験』が行われる一年」との見方も示された。
<金融用語>
EPSとは
Earnings Per Shareの略称で和訳は1株当たり利益。一株に対して最終的な当期利益(当期純利益)がいくらあるかを表す。 当期利益を発行株式数で割ったもの。