【QUICK Market Eyes 片平正二、大野弘貴】
■海外投資家の日本株買いを後押しする理由は多く、持続可能性を示唆=野村証
日経平均株価が11月24日に大幅高となった。野村証券は24日付のリポートで「米大統領選を控えた10月30日(2万2977円)から1カ月足らずで13.9%上昇し、米国株(S&P500は23日までで9.4%上昇)をアウトパフォーム。この1週間に限れば、上値が重い米国株に比べ日本株の強さがいっそう際立っている」と指摘した。
その上で「海外投資家の日本株買いを後押しする理由は多く、持続可能性を示している」と指摘。TOPIXのファクターリターンを確認すると、24日は海外投資家保有比率ファクターは0.93%上昇だった(過去200日の標準偏差は0.76%上昇)といい、「月初からの累和は5.29%上昇と影響の大きさが目立っている」という。それに一致するのは投資主体別売買動向といい、外国人投資家の日本株売買(先物含む)が「2週連続で買い越し額が1兆円を超えたのはアベノミクス最盛期の2014年10月第4週・11月第1週以来、約6年ぶりである(関連記事)」とも指摘した。
さらに27兆円のアンダーウエイトの修正を促す3つの優位性として、①欧米主要国に比較した場合のコロナ感染の小ささ(人口比で約50分の1)、②米中景気拡大の恩恵、③政府の景気押し上げ意向の強さ――に注目が集まっている可能性があるとも指摘。「野村は、メインシナリオで21年12月末の日経平均を2万8000円と予想しているが、ベストシナリオでは同水準の達成時期を21年4~6月期と想定している(関連記事)」と強気の見方を維持していた。
■グロース優位継続か、高ROA、低財務レバレッジ銘柄に注目=大和証
大和証券は24日付のクオンツリポートで、安定的に割安株がアウトパフォームする環境は想定しにくく、超低金利政策を背景に債券のインカムゲインを目的とした運用も困難であると指摘。
その上で、「株式市場では構造的に収益性が高い銘柄が物色されやすく、バリュエーションは高くとも、2021年1~3月期は基本的にグロース優位の展開を想定する」との見方を示した。
株価純資産倍率(PBR)効果が安定的に高かった03~07年にかけて景気動向指数CI(先行)は右肩上がりであったとの過去事例も示されている。
足もと環境においても、コロナ・ショック後の回復局面にあるものの、回復の持続性は期待しにくく、バリュー優位への転換は難しいとの見方も示された。
大和証券はグロース銘柄群の特徴に自己資本利益率(ROE)の3分解でみると「売上高純利益率:高、総資産回転率:高、財務レバレッジ:低」との傾向が見られると指摘。
その上で、「シンプルにROEの高い銘柄に投資をするよりも、ROA(総資産利益率:売上高純利益率×総資産回転率)と財務レバレッジに分解して、“ROA上位3分の1、財務レバレッジ下位3分の1”の銘柄に投資する戦略が有効」であるとし、TOPIX500構成企業で当該条件に該当する銘柄を、下記の通りスクリーニングした。
コード | 銘柄略称 | ROA(%) | 財務レバレッジ |
4519 | 中外薬 | 19.5 | 1.24 |
4686 | ジャストシステ | 18.4 | 1.26 |
3765 | ガンホー | 15.7 | 1.24 |
4507 | 塩野義 | 14 | 1.14 |
9843 | ニトリHD | 13.2 | 1.22 |
7974 | 任天堂 | 12.7 | 1.26 |
4516 | 日本新薬 | 11.1 | 1.2 |
4528 | 小野薬 | 9.7 | 1.2 |
4063 | 信越化 | 9.2 | 1.22 |
4732 | ユー・エス・エス | 9.1 | 1.2 |
4521 | 科研薬 | 8.8 | 1.23 |
2229 | カルビー | 7.9 | 1.32 |
2815 | アリアケ | 7.8 | 1.13 |
2875 | 東洋水産 | 7 | 1.31 |
2670 | ABC マート | 6.3 | 1.15 |
4536 | 参天薬 | 5.9 | 1.35 |
4151 | 協和キリン | 5.8 | 1.16 |
7313 | TSテック | 4.9 | 1.34 |
1883 | 前田道 | 4.8 | 1.29 |
6134 | FUJI | 4.8 | 1.18 |
6923 | スタンレ電 | 4.7 | 1.38 |
■株式へのローテーションはある程度の進展余地あり=ゴールドマン
ゴールドマン・サックスは23日付リポートでブレークイーブン・インフレ率(通常の国債利回りとインフレ連動債の利回り格差)が部分的に上昇しているにすぎないことを考慮すると、株式へのローテーションはまだある程度の進展余地があるとの見方を示した。
今月初めから米大統領選の不透明感が薄れてきたことや、新型コロナウイルス(COVID-19)のワクチンに関するニュースに前向きな見通しが示されたことから、高リスク資産が堅調に推移していると振り返った。ただ、最近になってCOVID-19の感染が拡大し、米国では新たなロックダウンが実施されたことで、短期的な回復軌道に懸念が生じているとも指摘。これを受けてゴールドマンのエコノミストは、2020年10~12月期のGDP成長率予想を4.5%増から3.5%増に下方修正した。
それでも、(1)マーケットは今後の経済成長を依然として保守的に見積もっている事、(2)前回のロックダウン時に比べ製造業が回復基調にある事、(3)COVID-19ワクチンが21年1~3月に販売される可能性が大幅に高まったため、短期的な成長の悪化は一時的なものにとどまる可能性が高い――以上3点から、今冬における成長鈍化は短期的なものに留まるとの見方が示されている。
<金融用語>
ROAとは
ROAとは、Return On Assetの略称で和訳は総資産利益率。利益を総資産(総資本)で除した、総合的な収益性の財務指標である。 企業に投下された総資産(総資本)が、利益獲得のためにどれほど効率的に利用されているかを表す。分子の利益は、営業利益、経常利益、当期利益(当期純利益)などが使われ、総資産(総資本)営業利益率、総資本(総資産)経常利益率、総資本(総資産)純利益率、とそれぞれ定義される。 したがって、総資産(総資本)利益率を高めることは、利益率の改善(費用・コストの削減)又は回転率の上昇(売上高の増加)によって実現される。実際の会計では、総資本を総資産として把握することが多い。 米国では、企業の収益性を判定するのに総資産利益率(収益率)=ROA、ないしは株主資本利益率=ROEがよく用いられる。