米カリフォルニア州ロサンゼルス郡で30日から2回目のロックダウン(都市封鎖)が導入される。12月20日までの3週間、外出は原則禁止、1世帯を超える集まりは公私や屋内外を問わず禁止される。食品店に入れるのは最大収容可能人数の35%まで。一般小売店は最大20%に制限される。
宗教行事と抗議活動は規制対象外になった。前者はニューヨーク州の教会の活動制限を違憲とした最高裁判所の判断の影響が大きい。トランプ大統領が指名した保守派のバレット判事が加わったことで、信仰の自由を重んじる保守に傾斜した兆候として全米の注目を集めた。ロサンゼルス当局が最高裁の判断を強く意識したことは明らかだった。
ロサンゼルス郡の公衆衛生当局の発表によると、28日の郡内の新規感染者は3143人、死者は19人。新規感染者が4000人を超えた前日と比べ減少したが、感謝祭に絡む連休で検査件数が少なかったことが要因と指摘された。
ロサンゼルスの日常生活にまだ大きな変化はない。マスク着用やソーシャル・ディスタンシング(人との距離を約2メートル確保すること)は徹底されているし、ロサンゼルスの学校は既にオンライン。3月のロックダウンと比べ厳格ではなく、誰も驚かなかった。ただ、規制がさらに強化されるとの警戒感は根強い。トイレットペーパーのパニック買いが1週間ほど前に復活したのは市民の心理を反映したものだと言える。スーパーマーケットの商品棚は空っぽで、アマゾンでも買えない。
それでもNBCニュースによると、感謝祭の前後の数日、全米で600万人超が飛行機で移動した。米疾病対策センター(CDC)の渡航自粛勧告が完全に無視された。27日の「ブラックフライデー」の客足は前年比で半減したと伝えられたが、特別セールを目当てにショッピングモールに行った知人は「混雑していた」と話している。国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は「今後2~3週間で感染拡大がさらに深刻化する」とNBCの報道番組「ミート・ザ・プレス」のインタビューで予想した。
欧州と同様、米国人にとってクリスマスは非常に重要なイベントだ。ロサンゼルス郡を含めほとんどの地域の規制がクリスマス前までとなっているのは、家族でクリスマスを過ごさせたいとの当局の思いがある。ただ、ファウチ氏はクリスマスと年末年始も規制を継続すべきだと警告した。
ロサンゼルス市のガルセッティ市長は年末までに市内で4000人以上が新たにコロナ感染で死亡すると予想した。ロサンゼルス・タイムズは29日、コロナ感染の記録的増加でカリフォルニア州の病院機能が崩壊しはじめたと報じた。外出禁止措置がクリスマス以降も延長されるとロサンゼルス市民の多くが感じている。ワクチン実用化への期待があるが、いまは不安の方が大きい。
(このコラムは原則、毎週1回配信します)
Market Editors 松島 新(まつしま あらた)福井県出身、慶應義塾大学卒。1985年テレビ東京入社、報道局経済部を経てブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長を歴任。ソニーを経て2011年からマーケット・エディターズの編集長として米国ロサンゼルスを拠点に情報を発信