親戚訪問のためフロリダ州マイアミに向かう家族をLAX(ロサンゼルス国際空港)まで送った。サンクスギビングデー(感謝祭、今年は23日)の前日。大渋滞でウーバーを降りてLAXまで3キロ歩いた旅行客の動画をTikTok(ティックトック)でみていたので、驚きはなかった。それでも通常の倍以上の時間がかかりドキドキした。全米自動車協会(AAA)は、22日から26日までに470万人が飛行機で移動。前年比で6.6%増加、過去20年で最多になると予想。自動車の旅行者は4910万人と試算している。
空の旅も陸の旅も昨年より出費が抑えられそうだ。全米15万カ所のガソリンスタンドの価格を集計したガスバディによると、21日時点のガソリン価格全米平均は1ガロンあたり3ドル27セント(1リットル約129円)と前年比11%下落。税金の関係でガソリンが全米で最も高いカリフォルニアは2カ月前と比べ20%近く安くなった。航空運賃も下がった。旅行検索のカヤックによると、ホリデーシーズンの航空運賃は昨年より約18%下落。インフレに疲れた米国人にとってデフレ傾向は歓迎すべきニュースだ。
感謝祭の翌日は1年でモノ(財)の値段が最も下がるとされるブラックフライデー。新型コロナウイルス流行中はセールがほとんどなかったが、今年は本格的でしかも前倒し。アマゾンの「拡大ブラックフライデー・セール」で64%値引きされたアレクサ端末を購入。発売間もないアップルのAirPods Proが早くも25%引きで売られていて驚いた。前の週末は娘の冬物衣料を40~60%引きで買い、我が家の買い物は感謝祭前に終了した。ショッピングモールの人出は予想より少なかった。米ブルームバーグ通信は、消費者は価格に敏感で、追加値引きを期待していると報じた。
CNBCは、多くの小売企業が年末商戦に関し慎重な見方を示したと報じた。全米小売業協会(NRF)によると、今年の年末商戦の売上高の伸びは前年比3~4%にとどまる見通し。2021年の12.7%増、22年の5.4%増と比べると弱気な予想だ。インフレと金利上昇に直面した消費者がどれほど支出するか小売企業は確信を持てないでいると伝えた。
世界最大級の小売業者ウォルマートのダグ・マクミロン最高経営責任者(CEO)は、16日の決算電話会議で「デフレ」という言葉を使い、アナリストを驚かせた。「米国において、今後数カ月に我々はデフレに見舞われるかもしれない」と述べた。ブルームバーグ通信は、米連邦準備理事会(FRB)による積極的な利上げで米国のインフレが鈍化していることを裏付けたと報じた。アーク・インベストメント・マネジメントのキャシー・ウッドCEOは、米ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)のインタビューで、「最大のリスクはインフレではなくデフレ。兆候が増えつつある」と述べた。消費者物価指数(CPI)がFRBの目標の2%に向かいつつある中、デフレをめぐる議論が始まったとWSJは伝えた。
パンデミックを受けた米国人の過剰貯蓄が今年枯渇する見通しを示したサンフランシスコ地区連銀が報告書を修正した。米経済分析局のデータを受け、超過貯蓄は2024年上半期中に取り崩されると改めた。学生ローンの債務返済が10月から3年以上ぶりに再開。ヤフーファイナンスによると、支払額は月200~500ドル(約3万~7万5000円)。4000万人超とされる学生ローン利用者の可処分所得は少なくなり、貯蓄が残っていても年末商戦で積極的に消費すると思えない。個人消費は米経済のけん引役。年末商戦の行方を市場関係者が注視している。
(このコラムは原則、毎週1回配信します)
福井県出身、慶應義塾大学卒。1985年テレビ東京入社、報道局経済部を経てブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長を歴任。ソニーを経て、現在は米国ロサンゼルスを拠点に海外情報を発信する。