【QUICK Market Eyes 池谷信久】最近のグローバル市場の注目点は米国で高まるインフレ期待だ。コロナ禍でも手厚い経済対策や緩和的な金融政策が金融資産の価格を押し上げるとの声が日増しに高まっている。ただ、実体経済における景況感は改善に一服の兆しも見え隠れしている。
■高まるインフレ期待、ドル安・株高・商品高が続く可能性も
中国の経済回復や新型コロナウイルスワクチンの早期普及への期待感から銅を中心とした金属価格が堅調だ。3日のロンドン金属取引所(LME)で銅先物は、公式価格として2013年3月中旬以来、約7年9カ月ぶりの高値を更新した(赤線)。
商品価格の上昇とともに、米国のブレーク・イーブン・インフレ率(BEI、債券市場が織り込む期待インフレ率)も上昇している。3日には1.86%と19年5月以来の高水準を付けた。
名目金利が一定ならBEIの上昇は実質金利の低下をもたらす。実質金利の低下はドル安や株高、商品価格の上昇の要因とされる。ドル安、株高、商品価格の上昇はいずれも米国の物価上昇要因になり、BEIは一段と上昇する可能性がある。米連邦準備理事会(FRB)が名目金利の上昇を抑えれば、BEIと市場(為替・株・商品など)が相互に作用し、バブル的な状況になり得るとの指摘もある。
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■米企業マインド回復に一服感、ISM非製造業景況感は2カ月連続で低下
米サプライマネジメント協会(ISM)が3日発表した11月の非製造業景況感指数は55.9と、前月から0.7ポイント低下した(緑線)。低下は2カ月連続で、QUICK FactSet Workstationによる市場予測(55.8)とおおむね一致した。
「企業活動・生産」が58.0で3.2ポイント低下、「新規受注」も57.2で1.6ポイント下がった。一方「雇用」は51.5で1.4ポイント上がり、「価格」も66.1と2.2ポイント上昇した。
ISMは「ほとんどの企業は、新型コロナウイルス感染拡大や米大統領選挙の影響慎重になっている」と指摘した。
1日発表の11月の米製造業景況感指数も10月から低下しており(青線)、米国の企業マインドの回復に一服感が出ている。

<金融用語>
非製造業景況感指数とは
非製造業景況感指数とは、全米供給管理協会(ISM=Institute for Supply Management)が算出する非製造業の景況感を示す指数のひとつで、毎月第3営業日に発表される。毎月発表される米国の主要指標の中で最も早い「ISM製造業景況感指数(毎月第1営業日発表)」とともに、米国の景気先行指標として注目されている。 非製造業(375社以上)の購買・供給管理の責任者を対象に、各企業の受注や在庫、価格など10項目についてアンケート調査を実施。「良くなっている」、「同じ」、「悪くなっている」の三者択一の回答結果を集計し、季節調整を加えた事業活動・新規受注・雇用・入荷遅延の4つの指数をもとに、ISM非製造業景況感の総合指数を算出する。 ISM製造業景況感指数と同様に、0から100までのパーセンテージで表し、50%を景気の拡大・後退の分岐点、50%を上回ると景気拡大、50%を下回ると景気後退を示す。