【QUICK Market Eyes 阿部哲太郎】世界的なEV(電気自動車)シフトの中、国内でも同様の動きが加速しつつある。12月16日の日本経済新聞電子版は、環境省と経済産業省は、電気自動車(EV)の普及を促すため、購入時の補助金を現行の2倍となる最大80万円に引き上げると報じた。補助金は自治体が独自に実施している補助事業との併用も可能となる。EVは、ガソリン車に比べて航続距離や充電スピードがネックとなるだけに普及に向けたインフラ整備が急がれる。裏を返すと相場の材料としての側面も併せ持つ。
■ EVの発展に急速充電が不可欠
日本発の自動車向け急速充電の統一規格である「CHAdeMO(チャデモ)」協議会は「急速充電器の設置台数とEVの販売台数の間には強い相関関係があることが示されており,EVの発展に急速充電が不可欠である」としている。チャデモは2010年にトヨタ自動車(7203)、日産自動車(7201)、三菱自動車(7211),富士重工(7270),東京電力(9501)の5社が幹事会社となり設立された。2018年には、中国の規格「GB/T」を推進する「中国電力企業連合会」と次世代の規格作りに向けた覚書を結んだと発表するなど世界的な充電規格の統一に向けた動きが進んでいる。チャデモの資料によると、海外の急速充電器設置箇所は、20年5月時点で2万4600箇所と3年前に比べて約3.6倍に増えた。一方、国内の設置箇所数は7700箇所と3年前に比べてわずか9%しか増えていない。
9日の日経新聞電子版は、東京都が電気自動車(EV)の急速充電器を設置する際の規制を2021年4月から緩和する方針だと報じた。東京都は小池百合子知事が30年までにガソリン車の新車販売をゼロにする方針を発表している。EV用の充電器は、家庭用の電源を利用できる普通充電器と高出力の急速充電器がある。急速充電器は、現在、都の火災予防条例では充電器ではなく「変電設備」として扱われているため、設置要件のハードルが高く普及のネックとなっていた。今後は、他の自治体でも同様の動きが出てくる可能性も高く、急速充電器の普及の動ぎが活発化しそうだ。
■急速充電関連銘柄に注目
電子部品大手のローム(6963)は、EVに搭載される急速充電用オンボードチャージャーを手掛けている。オンボードチャージャーは、住宅のコンセントや充電ステーションの交流の電気をバッテリーに適した直流の電気に変換するコンバーターとしての役割をもつ。20年3月には、従来のシリコン製のよりも電力の変換効率が高く、耐熱性などにもすぐれたSiC(炭化ケイ素)製のオンボードチャージャーが中国の総合車載ティア1(一次下請け)メーカーのユナイテッド・オートモーティブ・エレクトロニック・システムズ(UAES社)に採用されたと発表。10月からUAES社から中国などの自動車メーカーに提供されている。
アルミ電解コンデンサー大手メーカーのニチコン(6996)は、省スペース型のEV用急速充電器を手掛けている。 また、公共・産業用の蓄電システムにEV・PHV(プラグインハイブリッド車)向けの急速充電器を組み合わせた複合システムを手掛けており、再生エネルギーを活用した蓄電システムを商業施設や公共施設向け、ガソリンスタンドなどに導入の実績がある。主力のコンデンサーでは、電動車のモーター駆動用インバーターで使われるフィルムコンデンサーの販売がグローバルで伸びている。4月からは新設した中国の江蘇省宿遷市の工場で生産を開始し、需要増に対応している。