【日経QUICKニュース(NQN) 田中俊行】オリエンタルランド株(4661)に買いが入る場面があった。2021年3月から東京ディズニーリゾート(TDR)でチケットの変動価格制を導入すると22日に発表し、収益改善の期待が高まったからだ。運営するホテル宿泊者向けに通常より早く入園できるチケットの販売も決めた。市場ではカタリスト(株価上昇の媒介)の「体験の有料化」に向けた準備が着実に進んでいるとの読みがある。
■単価引き上げ効果は?
OLC株は23日、一時前日比465円(2.9%)高の1万6715円を付けた。「東京ディズニーランド」と「東京ディズニーシー」のチケットに変動価格制を導入するのが手がかりだ。繁忙期や土日祝日に大人の1デーパスポートの料金(税込み)を8200円から8700円に値上げする。中人や小人も同じ日程で価格を引き上げる。この措置は21年3月20日入園分から始める。繁忙期の混雑緩和で顧客満足度の向上が期待できるほか、収益改善にもつながる。
ではどう収益に影響するのか。モルガン・スタンレーMUFG証券の竹村淳郎アナリストは22日付の投資家向けリポートで「仮に公立学校が休日となる170日で客単価が平均400円引き上げられ、結果的に入園者が平準化される場合、客単価の引き上げ効果は186円と見なすことができる」と指摘。入園者数が3000万人、原価率7%を前提にすると「利益の押し上げ効果は年間52億円」と試算する。
※OLCの株価と日経平均株価を2019年末を100として指数化
OLCは新型コロナの感染拡大に伴う休業で、21年3月期の最終損益が511億円の赤字になると見込む。アナリスト予想平均であるQUICKコンセンサスによると、こうした負の影響がなくなる22年3月期は488億円の最終黒字に転換する見通し。今回のチケットの変動価格制の導入も来期の業績回復の確度を高める一因となりそうだ。
■アーリーエントリーチケット
市場が期待するのはそれだけではない。今回、来年2月20日入園分から、ディズニーホテルの宿泊者を対象に「アーリーエントリーチケット」を試験的に販売するとも発表した。3000円のチケットを購入すれば、通常よりも1時間早く東京ディズニーシーに入園できる。野村証券の担当アナリスト、山村淳子氏は22日付のリポートで、業績への影響は限定的としつつ「コンセプトは1時間早くパークへ入園し、人気のアトラクションに自由に乗ることができるという『体験の有料化』だ」とみる。
「体験の有料化」を巡っては、アトラクションに待たずに乗れる「ファストパス」を有料にすることが市場で期待されている。
例えば、野村証券の山村氏はウィズコロナ時代に新エリアなどに顧客が集中するのを緩和して顧客満足度を上げる策として、人気アトラクションの搭乗を保証する「有料確約券」の導入を予想。「『アーリーエントリーチケット』は有料チケットの導入のコンセプトと合致する」と指摘する。
今回の試みがうまくいけば、顧客とOLCがウィンウィンとなる将来も描きやすい。株主にとってもウィンになるだろう。