【NQNシンガポール=編集委員 今 晶】インターネット上の代表的な暗号資産(仮想通貨)であるビットコインが年末年始も上昇基調を保っている。日本時間3日午後には1ビットコイン=3万4500ドル台まで急伸した。2020年12月中旬に重要な節目の2万ドルを突破した後、1カ月もたたずに3万ドルを超えている。機関投資家や電子決済に関わる企業の引き合いが根強く、需給逼迫が続く。
■閑散に売りなし
米国などの株高傾向や外国為替市場での米ドル安トレンドは変わっていない。ヘッジファンドや富裕層の資産運用を担うファミリーオフィスなどの投資家はリスクをとって暗号資産を買う余裕がある。年末年始で商いが細るなか「閑散に売りなし」を地で行くような相場展開となった。日本時間4日8時時点では3万2000ドル台まで調整しているが、相場の先高観は健在だ。
コインの品薄状態が強まるにつれ、借り入れたコインを売る空売りは難しくなっている。生産者に当たる採掘者(マイナー)からの売りもあまり出てこなくなった。売り手は将来の価格変動リスクの回避(ヘッジ)を目的とする先物市場が中心で、現物は品不足が解消しない。
■「ビットコインは参加者を選ぶ」
17年に起きたバブルをけん引した個人マネーの存在感は依然として目立たない。1単位あたり3万ドル台の商品を活発に売り買いするには相当な資金力が必要だ。証拠金を積んで運用額を増やし、機関投資家と同じ土俵にたてる外為証拠金(FX)取引のようにはいかなくなってきた。「ビットコインは参加者を選ぶ市場になってきた」(シンガポールの個人投資家)といえる。
現在の暗号資産の価格上昇は良くも悪くも伝統的な金融・資本市場の変化がもたらしたもの。暗号資産市場の「独り相撲」だった18年初までとは異なり、伝統市場と暗号資産の市場との距離は確実に縮まっている。「ビットコインがバブルなら株価もバブル。株がバブルでないならビットコインも違う」(欧州系ヘッジファンドのマネジャー)――。市場ではそうささやかれる。