22日、娘がサンタモニカの自動車ディーラーに向かった。アポ確認メールを提示したが定期点検を受けられなかった。スタッフが少なく対応できないと言われたという。個人的には銀行で苦労した。米大手銀行に口座を開設したものの、別銀行からの送金が届かない。カスタマーセンターが繋がらないため支店に出向いた。入場制限で長い行列ができていた。iPadをアップルストアのアプリで購入した妻には、同時に注文したカバーとイヤホンが2回も送られてきた。肝心のiPadは注文後1カ月たった今も、届いていない。
新型コロナウイルスのパンデミック(疾病の大流行)の影響で米社会全体が混乱していると感じることが少なくない。サプライチェーンのメカニズムが壊れ、コロナ抑制のための幅広い活動制限で社会が回っていないと痛感する。
テレビのローカル枠ではワクチン接種の混乱がトップニュースだ。コロナ検査場からワクチン接種会場に転換したドジャース・スタジアム駐車場の長蛇の列を中継で伝えた。早朝から数時間待っているという70歳代の女性は「いつ接種できるのか、見当すらつかない」と運転席からインタビューに答えた。
ロサンゼルス・タイムズ紙のまとめでは、カリフォルニア州は24日までに約200万人がワクチン接種を受けた。州の人口の4.2%だ。州政府に配布済みの410万回分の約半数にすぎない。医療従事者に加え65歳以上と教師や消防士などが対象だ。次は50~64歳と糖尿病などの持病がある人が対象になるが、目途はたっていない。ニューヨーク・タイムズの調査でも全米の幅広い地域でワクチン接種数が計画を大幅に下回っていることが示された。CNNはワクチン接種の遅れへの不満が全米で高まっていると詳しく報じた。
米ネットワークTVの日曜朝の報道番組がワクチン接種の遅延の原因がどこにあるのか、専門家や政府関係者に質問したが、納得がいく答えがなかった。連邦政府の官僚主義が問題なのか、流通か、それとも地方自治体か。製造から接種までの過程が複雑で、誰も原因を特定できないようにみえた。
「就任後最初の100日で1億人のワクチン接種を達成する」とバイデン大統領が国民に宣言した。米国向け1億人分のワクチンが製造される可能性は高いものの、いまの混乱をみると目標達成はにわかには信じられない。
ジョンズ・ホプキンス大学のまとめでは、24日時点で新型コロナウイルスの世界の感染者数が1億人に接近した。感染者最多の米国の感染者は2500万人を突破。死者は40万人を超えた。バイデン大統領は死者数が60万人を超える可能性があると警告した。
25日に始まる週は、米主要企業の決算発表が相次ぐ。景気に敏感なキャタピラーやGE、パンデミックの打撃が深刻なアメリカン航空、「ゲームチェンジャー」とされるワクチンを開発中のジョンソン・エンド・ジョンソン。主要株価指数が最高値圏で推移するなか、経営者が業績をどう予想するのか。ワクチン接種が遅れても景気は本格回復するとみているか。サプライチェーンは正常化するのか。アップルなどテクノロジー企業への関心が高いが、幅広い業種の業績見通しがいつになく注目されている。
(このコラムは原則、毎週1回配信します)
Market Editors 松島 新(まつしま あらた)福井県出身、慶應義塾大学卒。1985年テレビ東京入社、報道局経済部を経てブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長を歴任。ソニーを経て2011年からマーケット・エディターズの編集長として米国ロサンゼルスを拠点に情報を発信