【QUICK Market Eyes 本吉亮】インターネット上で不特定多数に支援を募るクラウドファンディング(CF)の市場規模の拡大が続いている。新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受けた飲食店などへの支援や、外出自粛による「巣ごもり消費」の増加を背景に市場が拡大したことが背景にある。サイバーエージェント傘下でクラウドファンディング大手のマクアケ(4479)は、独自のビジネスモデルで業績を拡大しており注目したい。
■「購入型」のクラウドファンディング
クラウドファンディングはリターンの形態により「寄付型」「購入型」「金融型」に分類されるが、特に個人から資金を募って製品などを送る「購入型」が急成長している。日本クラウドファンディング協会によれば、「購入型」の2020年1~6月の決済総額は前年同期比で約3倍の223億円に伸びた。
*決算発表資料より
マクアケは「購入型」の分類となるクラウドファンディングサービス「Makuake」を提供し、量産前にテスト販売する新製品・新サービスを消費者や流通バイヤーに提供する「0次流通」に特化したビジネスモデルを展開していることに特徴を持つ。「0次流通」とは「1次流通(小売)」よりも前のプレマーケティングを指し、企画の意思決定工程をデジタル化することで無駄のない効率的な企業活動が可能となる。
*決算発表資料より
メーカーは開発経緯や製品に込めた作り手の思いを購入ページに丁寧に書き込むことにより、テストマーケティングの場で初期顧客が獲得でき、在庫リスクを軽減できる。また、販売実績により制作資金の早期回収にもつながる利点がある。一方で、消費者は今まで世の中になかった新製品・新サービスをいち早く体験できることで満足感が得られる。そのため、メーカーおよび消費者ともにメリットがあるとみられる。
*決算発表資料より
■日本と海外、相互に展開も
マクアケを利用した成功事例としては、大ヒットした映画「この世界の片隅に」などがある。従来はマクアケを利用するメーカーは小規模事業者がマーケティングに利用する例が多かったが、足元では大手メーカーの利用も増加しているという。また、1月21日にはマクアケは世界的なクラウドファンディング運営会社である米インディゴーゴーと業務提携を発表。相互の顧客を融通してクラウドファンディングを活用して海外で商品を販売したい日本の事業者や、海外の事業者の日本での展開をしやすくするとしており注目される。
*決算発表資料より
■応援購入額が前年同期比2倍
26日に発表した2020年10~12月期単独決算は、売上高が前年同期比91.1%増の9億9200万円、営業利益は47.7%増の1億5200万円と大幅増収増益。コロナを追い風とした伸びは落ち着いたものの、応援購入総額が前年同期比2倍と伸びた。また、品質保証体制の強化に注力するなど、今後の成長加速に向けた準備も整えており業績拡大が期待されよう。
応援購入額
*決算発表資料より
株価は米インディゴーゴーとの業務提携を手がかりに急騰し、1万円の大台を回復した。今回の10~12月期決算は前四半期比で初の減収になったことを嫌気して利益確定売りに押される可能性はあるが、コロナ特需後も応援購入額は高水準をキープしており、さほどネガティブ視する必要はないだろう。1万円割れの水準は押し目買いの好機とみたい。
※マクアケ株価と日経平均株価の相対チャート。(2019年末を100として指数化)
<金融用語>
クラウドファンディングとは
クラウドファンディングとは、群衆、人々(crowd)と資金調達(funding)をつなぎ合わせた造語。あるプロジェクトを実行するため、インターネットを通じて不特定多数の人から比較的小額の資金提供を募る活動、または資金集めのために利用できるサービスのこと。Web上で自分の資金集めの目的や計画を公表し、協賛してくれる資金拠出者を募集する。比較的少額から出資が可能なため、多くの人からの資金集めが可能となる。主なサービスとして、米国の「Kickstarter」などが有名。ソーシャルファンディングともいう。