独ＥＳＧ評価会社アラベスクＳ－ＲａｙによるＥＳＧスコアの１月31日時点の日本企業ランキングは、ユニ・チャーム（8113）が３位と20年12月31日時点の14位タイから上昇した。また日本マクドナルドホールディングス（2702）は49位タイから９位に浮上した。１位はオムロン（6645）、２位は東京エレクトロン（8035）で順位に変動はなかった。

■世界トップ20、国内首位オムロン、同２位東エレクがランクイン

１月31日時点の海外企業も含めた世界ランキングでは、国内ランキング首位のオムロンが６位、同２位の東エレクは11位で、日本の２社がトップ20に入った。日本企業566社の分布状況を10点刻みで見ると、50点以上60点未満が269社と最も多く、40点以上50点未満が132社で続いた。平均は52.68点で、2020年12月31日の52.81点（569社平均）を下回った。

アラベスクＳ－Ｒａｙは70カ国・地域以上の7000社を超す企業の公開情報と世界の情報元からＥＳＧ評価に必要なデータを自動収集し、人工知能（ＡＩ）による独自の手法でＥＳＧスコアを毎日更新している。ＥＳＧスコアは100点満点で、Ｅ（環境）、Ｓ（社会）、Ｇ（企業統治）の３つのサブスコアから構成され、ＥＳＧ課題の株価へのインパクトを考慮して、業種ごとに評価項目のウエートを変えているのが特徴だ。

■ユニチャームが2020年12月末の14位タイから浮上

ユニチャームの１月31日のＥＳＧスコアは70.90点（国内企業３位）と、2020年12月31日の67.93点（同14位タイ）から上昇した。サブスコアを見ると、環境が71.96点から73.86点に、社会は67.97点から68.61点に、企業統治は64.76点から70.09点に、３分野そろって１カ月前に比べ点数を伸ばした。2020年１月31日時点のＥＳＧスコアは61.07点で、１年前と比べると10ポイント近くスコアを上げた。

ユニチャームのホームページを見ると、「企業情報」と「投資家情報」の間に「サステナビリティ」のタブがある。同ページには最新情報をはじめトップメッセージ、ＣＳＲの重要テーマ、ＥＳＧ別の取り組みなどを掲載している。2020年10月にはユニ・チャームグループ中長期ＥＳＧ目標「Ｋｙｏ－ｓｅｉ　Ｌｉｆｅ　Ｖｉｓｉｏｎ　2030」を発表。このビジョンの実行により、環境問題や社会課題の解決への寄与、消費者や地域社会への貢献、継続的な事業成長を目指すとしている。こうした取り組みがＥＳＧスコアの評価につながっているもようだ。

■マクドナルドは2020年12月末の49位タイから躍進

マクドナルドの１月31日時点のＥＳＧスコアは68.59点（国内企業９位）と、2020年12月31日時点の64.41点（同49位タイ）から上昇した。サブスコアは、環境、社会、企業統治の３分野そろって１カ月前に比べ点数を伸ばした。１年前のＥＳＧスコアは61.75点で、評価を大きく上げている。

マクドナルドのホームページを見ると、「企業情報」「ＩＲ情報」などと並んで「ＥＳＧへの取り組み」というタブがある。特に注力する５つの柱として「持続可能な食材の調達」「パッケージ＆リサイクル」「ファミリーへのコミットメント」「ピープル・エンパワーメント」「気候変動への取り組み」を掲げている。

例えば、「パッケージ＆リサイクル」分野のプラスチック対策では、2016年からアイスコーヒーの容器をプラスチックから紙に変更し、紙カップには森林保全の国際規格である「ＦＳＣ認証紙」を使用。持ち帰りには紙袋の使用を基本とし、プラスチックバッグを削減しているという。こうした様々な施策が評価されているとみられる。

■３カ月前・１年前との比較で株価騰落率は高安まちまち

ユニチャームの株価は１月の最終営業日だった１月29日終値が4700円で2020年10月の最終営業日（10月30日）比では2.9％下落したが、2020年１月末（１月31日）比では24.6％上昇している。一方、マクドナルドの1月29日終値は5100円で、直近３カ月では3.0％上昇したが、１年前比では1.5％安い水準だった。

ＥＳＧスコアの高い評価に連動して株価が上昇したとは言い難いが、企業のＥＳＧに対する取り組みに関心を寄せる投資家は増えているとみられる。ＥＳＧスコアを企業の収益力や投資指標などと併せて企業を評価する尺度の１つとして見ていくのが良いだろう。（ＱＵＩＣＫリサーチ本部　遠藤大義）