【QUICK Market Eyes 弓ちあき】2月のQUICK月次調査<株式>は足元の10~12月期決算の内容を受け、「期待」から「現実買い」入りの局面転換をうかがわせる内容だった。日経平均株価が30年ぶりに3万円台に浮上。現実買いで大台固めができるかに焦点が移る。株価変動要因では「景気・企業業績」を変動要因に挙げる割合が52%と、前月(53%)からわずかに低下したものの、影響度を示す指数ベースでは66.1と、前月から10.2ポイント上昇している。
■新型コロナによるマイナス影響は峠を越えた
決算発表では上方修正組が圧倒的に目立っている。QUICK特設サイト「決算モニタ」によれば、東証1部(除く金融、2月8日時点)で21年3月期の営業利益予想が期初計画を上回る企業は523社と、下回る企業数(115社)を大きく突き放している。新型コロナウイルス感染症によるマイナス影響は峠を越えたとのシナリオが現実化しつつある。ワクチン接種の進捗度合いや感染の抑え込みがどこまで可能なのか、東京オリンピックの開催に向けても観戦客の規模の縮小は避けられそうもなく、目を凝らせば不透明要素は残る。ただ、コロナ禍の中で人員削減を含む思い切った構造改革に舵を切った企業も少なくなく、企業体質そのものが強靭(きょうじん)になったことから、需要回復局面での利益の伸びが大きくなることもありそうだ。
実際、株式市場は変化を先取りしている。①時価総額3000億円以上の3月期決算企業で、②5日までに2020年4~12月期決算を発表し、かつ21年3月期の連結営業利益予想を上方修正している企業について、同10~12月期の売上高営業利益率の改善幅が同7~9月期比で高かった上位10社の合成指数をみると、年明け以降は日経平均株価を8ポイントあまり上回る動きとなっている。
顔触れを見ると、コロナ禍での業績悪化やそれに伴う株価下落の大きかった銘柄群が目立つ。21年度の業績見通しに目線が切り替わる中で、コロナ特需銘柄には反動減の影響が出やすくなっていることもあり、出遅れ修正の要素が濃く反映されている。
■22年3月期の予想EPS増益率上位銘柄
一方で、月次調査によれば目先の投資スタンスでは「現状維持」が79%、次いで「やや引き下げる」(12%)との声がわずかに「やや引き上げる」(9%)の声を上回る。全体での持ち高は大きく積み増す感はなく、銘柄間の調整となりそうだ。収益底入れから業績拡大へのシナリオにつなげるため、売上高営業利益率の改善に加え、アナリスト予想の平均値であるQUICKコンセンサスで22年3月期の予想EPS(1株利益)の増益率上位銘柄を並べると、日本精工(6471)や住友電気工業(5802)、デンソー(6902)が上位に入った。
これら銘柄は今後の「現実買い」局面でも注目銘柄になりそうだ。なお、月次調査ではオーバーウエート優位の業種に「電機・精密」(30%)に次いで「素材」(19%)が入り、「鉄鋼・機械」(11%)が続く。
半導体不足でサプライチェーン(供給網)リスクに再度さらされている「自動車」(3%)に資金を振り向けにくい状況下、中国の需要拡大に支えられている業界が相対的に選好されやすいようだ。特に素材分野は世界的な投資テーマとして浮上する環境関連技術で高機能製品の需要が拡大することも期待できそうだ。
<金融用語>
QUICK月次調査とは
QUICK月次調査とは、株式会社QUICKが株式、債券、外国為替(外為)の部門別に月次で行う市場動向調査のこと。 調査方式は、各部門の相場予測など同じ項目を毎月調査する「定型質問方式」と今話題の項目を調査する「スポット質問方式」を組み合わせたもので、毎月各市場関係者へアンケートを行い、調査結果をQUICKと日本経済新聞社で公表している。各部門の調査結果から「強気」、「弱気」といった市場のセンチメントと旬のテーマが分かる点が特徴。1994年4月に株式部門で調査を開始し、現在では債券、外為部門と合わせた3部門で調査(英語版の調査結果も公表)を行っている。