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女性蔑視の真逆を行く株式市場、ESG関連で女性活躍推進を重視

QUICK Market Eyes  本吉亮】森喜朗元首相の女性蔑視発言が話題となっているが、株式市場ではESG(環境・社会・企業統治)関連で女性活躍推進を重視する傾向が強まっている。公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は「基本ポートフォリオ」の影響により、国内株の保有残高で日銀の後塵を拝すことになったが、ESG投資額を増やしていることは見逃せない。運用対象として、MSCI日本株女性活躍指数に続いて、Morningstarジェンダー・ダイバーシティ指数を採用しており、今後女性活用が大きなテーマになるかもしれない。

■リスク管理強化のための「基本ポートフォリオ」

GPIFが2月5日公表した運用状況によると、2020年10~12月期の運用収益が10兆3528億円だった。運用利回りは+6.29%で3四半期連続の黒字。収益率としては過去4番目、収益額は3番目の高水準となった。国内株式は+11.27%、外国株式は+11.88%。20年12月末の運用資産残高は177兆7030億円で過去最高で、市場運用を開始した01年度からの累積収益額も85兆3011億円と過去最高を更新した。昨年12月に日経平均株価が29年ぶり高値を更新し、米主要株価指数が過去最高値を記録するなど、内外株式の収益を押し上げた。株式の収益額は国内で過去最高、外国は過去2番目の高水準だった。

GPIFは、リスク管理強化のため今年度から国内外の株式・債券の4資産にそれぞれ25%ずつ振り向ける新たな「基本ポートフォリオ」に基づき運用している。運用資産の構成比は国内株式が12月末で25.28%(9月末は24.06%)と、目安となる25%を超えたことから10~12月期は約8800億円売り越したもよう。1~3月期、4~6月期はコロナショックによる株価急落を受けて合計1兆円超を買い越したが、その後の株価回復・資産構成割合の上昇から一定程度の株式が売却されたとみられる。

GPIFは長らく国内最大の株主として君臨してきたが、その座を日銀に明け渡すことになった。20年末段階で日銀のETF保有時価は約46兆5600億円でGPIF(約45兆2700億円)を初めて上回った。日銀は2010年にETF購入政策を開始。当初は年4500億円ペースでスタートした買入額の上限は1兆、3兆、6兆へと増加し、コロナショック後に12兆円に引き上げられた。日銀は2%の物価安定目標を達成するためETF買いを継続しているが、出口戦略(売却ルール)は今のことろ決まっていないため、今後も増え続ける一方となる。GPIFは運用資産が増えない限り、株価上昇局面では他資産とのウエイト調整のため売却を行わなければならないため、その差は拡大の一途となりそうだ。

■ジェンダーダイバーシティに富む企業を評価

GPIFは株式投資の絶対額は増やしていないが、足元でESG比率を上げている。20年3月末時点で国内4本のパッシブ指数、海外1本のパッシブ指数を対象に合計5兆7000億円のESG投資を行っていたが、12月にMSCIACWI ESGユニバーサル指数と、Morningstarジェンダー・ダイバーシティ指数の追加を発表。ESG総合型の前者に1兆円程度、テーマ型(女性活躍)の後者に3000億円程度投資した結果、ESG関連指数への投資残高は約7兆円に達した。

GPIFは、ジェンダーダイバーシティに富む企業(女性の登用が進んでいる企業)は幅広い人材プールにアクセスできることなどにより、優れたパフォーマンスを上げる可能性があると指摘。マクロ経済の観点からは、ジェンダーダイバーシティの改善(女性の労働参加率上昇)は、各国の経済成長を後押しする可能性があるとみている。これらを踏まえ、女性を登用する方針を持ち、環境を整備し、実績を上げる企業への投資ウエイトを引き上げることで、投資先や市場全体の持続的成長による長期的な収益の確保を目指すとしている。下記でジェンダー・ダイバーシティ指数およびMSCI日本株女性活躍指数の採用上位銘柄を抜粋したが、いずれも上場来高値圏にある銘柄群だけに株式市場で評価さていると言えそうだ。

<ジェンダー・ダイバーシティ指数 採用上位銘柄(21年1月末時点)>

銘柄 セクター ウエイト比率(%)
マイクロソフト テクノロジー 4.9
アップル テクノロジー 4.78
アマゾン 景気循環消費財 3.85
アルファベットA 通信 1.25
アルファベットC 通信 1.22
J&J ヘルスケア 1.12
エヌビディア テクノロジー 0.92
ビザ 金融サービス 0.9
フェイスブック 通信 0.86
ウォルトディズニー 通信 0.8

<MSCI日本株女性活躍指数 採用上位銘柄(20年12月末時点)>

コード 銘柄名 セクター ウエイト比率(%)
6098 リクルートHD 資本財・サービス 3.91
8035 東京エレクトロン 情報技術 3.46
4519 中外製薬 ヘルスケア 2.82
9433 KDDI コミュニケーション・サービス 2.64
6367 ダイキン工業 資本財・サービス 2.61
2413 エムスリー ヘルスケア 2.48
4452 花王 生活必需品 2.48
4568 第一三共 ヘルスケア 2.39
6981 村田製作所 情報技術 2.24

<金融用語>

ダイバーシティとは

企業におけるダイバーシティ(多様性=Diversity)とは、多様な人材の積極的な活用や多様な働き方の実現を目指す考え方のこと。女性の登用推進のみならず、高齢者、外国人、障害者、LGBT(性的少数者)など様々な属性をもった人を受け入れ、働き方をサポートするための人事制度や職場環境を整えたり、それぞれの価値観やライフスタイルを尊重して勤務時間や場所の自由度を高めたりすることで個々の活躍への支援を行う。経営戦略としてダイバーシティを実践することによって、多様化する顧客のニーズに柔軟に対応し、企業の生産性や競争力を高める効果を狙う。

著者名

QUICK Market Eyes 本吉 亮


投資経験 3~10年
投資商品
外国株式 投資信託

MSCIは独自に開発した性別多様性スコアと不祥事スコアから指数を選定(MSCI)。Morningstarは調査・分析プロバイダのEquileap社のジェンダー・イクオリティ・スコアカードに基づく世界の上場企業のデータを参照しているようだ(Mornigstar)。E社のスコアカードは19の項目からなっているとのこと。項目の数を絞らないと、多くの上場企業を定性的に評価することが難しいのだろう。こうした指数が開発されてから数年経ち、20年8月に米国証券取引委員会(SEC)が、上場企業に対して「人的資本の情報開示」を義務づけると発表した。開示のフレームワークは企業に任されるようだが、国際規格「ISO 30414」は投資家から“最低限”の情報開示ガイドラインとしてみられる向きがあるようで、この規格に沿った情報開示の圧力が企業にかかっていくのではないかと思う。この流れで世界中の上場企業が国際規格に基づいた情報開示に取り組むようになれば、より企業の実態を反映した精度の高い指数が開発される可能性もあるのだろうか…。

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2021/2/16 20:18

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