【QUICK Money World 吉田 晃宗】来週(3月1日~)の上場REIT(不動産投資信託)市場を展望するために、QUICKが今週配信したREIT関連ニュースを振り返った。日銀が2月18日、19日に前場のTOPIX(東証株価指数)の下落率が0.5%を超えたにも関わらず上場投資信託(ETF)買いに踏み切らなかったことで、市場では、3月の日銀の金融政策決定会合における政策点検への警戒が再燃している。なお、来週はREITの決算発表は予定されていない。
今週の主要REIT指標の騰落率は以下となる。REIT相場は軟調。2月26日に日経平均株価が1204円安と過去10番目の下げ幅を記録し、REIT市場にも売りが波及した。「物流」の下げがきつい一方、「住宅」は逆行高となった。
銘柄名 | 騰落率(%) |
東証REIT指数 | -0.51 |
東証REITオフィス | -0.04 |
東証REIT住宅 | +1.48 |
東証REIT商業 | -1.43 |
東証REIT物流フォーカス | -2.83 |
■日銀のETF買い、形骸化することを承知で数値目標を残す選択肢も=野村証券(2/22)
日銀が18日、19日に前場のTOPIXの下落率が0.5%以上でも上場投資信託(ETF)買いに踏み切らなかったことで、3月の金融政策決定会合での点検が改めて警戒されている。
野村証券は19日付のリポートで「日銀はETF買入れの実施基準を公表していないが、最近はTOPIXの前場騰落率がマイナス0.5%を下回れば発動というパターンが守られていた。日銀が今回、機械的なETF購入パターンを2回連続で見送った理由として考えられるのは、①株価の大幅上昇により『資産価格のプレミアムへの働きかけ』の必要性が低下しているとの判断、②購入をより機動的に行うための修正、③3月19日の決定会合での政策修正の可能性も睨みつつ市場に買入れペースの減速を予め打診したい意向――の3点だろう」と指摘した。その上で、すでに日銀が1回あたりのETF購入額を21年1月から501億円に減額(ピーク時の20年3月に2004億円、その後徐々に引き下げて20年最後の買入れは701億円だった)しており、声明文の変更を行わずに資産購入規模を縮小する「ステルステーパリング」を実施しているとしながら、「しかし今回、日銀が『一時停止』に踏み込んだことにより、年間の購入ペースについて当面の上限としている約12兆円、原則的な買入れ方針としている約6兆円という、2つの数値目標を声明文から取り下げる可能性も示したと言える」と指摘。さらに声明文が形骸化することを承知で「数値目標を残す選択肢もあるだろう」としながら、「国債購入プログラムの場合、『年間80兆円』を掲げながら約10兆円までテーパリングを進め、最終的には量的目標を廃止するというプロセスを辿った」ことを紹介し、国債買入オペと同じ道をETFオペも辿る可能性を指摘した。
また、新しい買入方針が明らかになるまでの注目点として、買入基準と規模の2つを指摘。J-REITの買入オペが参考になるとし、「例えば買入れ基準としている前場TOPIX騰落率のしきい値をマイナス1.0%などより厳しい値に設定する一方、1回あたりの買入れ額は500億円台から700億円台に戻すことが考えられる。仮にこの新パターンに移行した場合、過去に前場TOPIXの騰落率がマイナス1.0%を下回った日の割合などを基に計算すると、年間買入れ額は2兆1000億円まで縮小すると試算される」とみていた。(QUICK Market Eyes 片平正二)
■J-REIT、3月18~19日の金融政策決定会合が一部で売りの契機になる可能性=野村(2/24)
東証REIT指数が21年初から2月22日にかけて11%上昇した一方、TOPIXはその間に8%上昇でJ-REITが強含んでいる。
野村証券は22日付リポートで、J-REIT相場の上昇ペースの速さから、「最近の速い上昇に警戒感を抱いたり、20年度内に売買益を確定したい市場参加者の売りが今後3月末に向けて増加する展開に注意したい」と指摘した。
そして日銀が3月18日、19日に開催予定の金融政策決定会合が一部の市場参加者の売りの契機になる可能性もあるという。同会合で金融緩和政策の点検結果を公表する方針と見られる日銀にとっては、今後金融緩和を長期にわたって続けることを想定した上での資産買入政策の持続性確保が重要なポイントと考えられる。その観点から、日銀は各種資産の買入政策を弾力化する可能性があるとみている。
例えば「現状ゼロ±0.2%程度としている10年国債利回りの許容変動幅の目安を拡大したり、ETF(上場投資信託)とJ-REITの年間買入額に新たに下限の目処を設けて実際の年間買入額を下限に近い水準で抑える事実上の買入額減額を図る可能性もあると考えられる」と指摘。これらはJ-REIT相場にプラスとの見方にはなり難い一方、マイナスと捉えられることはあり得る。また日銀は今後もJ-REITの買入れを続けるためにJ-REITの個別銘柄毎の保有比率の上限を現状の10%から引き上げる可能性があるが、日銀によるJ-REITの買入れ継続は市場参加者の共通認識で、特段の好材料にはならないと考えられる」とも指摘した。
一方で日銀がJ-REITの買入方法を現行の個別銘柄毎の買入れから東証REIT指数連動ETFを通じた買入れに切り替えることとなれば、現状日銀の買入基準に合致していない信用格付AAマイナス未満の銘柄群にとっては事実上日銀の資金が初めて投入されるとの見方から、信用補完的な面からも好材料と捉えられる可能性がある。そうなれば、低格付銘柄群の株価が上昇してJ-REIT相場を更に押し上げる展開となることも考えられるとみている。
日銀とは別の話題になるが、3月のJ-REIT市場ではFTSE社が20年9月末以降4回の四半期末にわたってJ-REITをグローバル株式指数に組み入れるイベントの3回目が予定されており、それが一部の市場参加者の買いを誘発する可能性もあるという。
短期的には相場調整局面の出現に注意したい一方、J-REITの買い材料になっておかしくはないイベントも挙げられ、「最近の相場上昇や今後幾つかのイベント、年度末という時期からも市場参加者の様々な思惑で目先のJ-REIT相場は割と荒い動きが続く可能性がある」との見解を示した。(QUICK Market Eyes 川口究)
■「割安感からREITに外国人の買いが入っている感じです」(2/24)
「東証REIT指数(155)が強いです。リスクオンの地合いの中で割安感がありますから、買っているのは外国人投資家かな~という感じの強さです。オフィス系は先々の需要懸念がありますけど、コロナ禍で売られていたホテル系が強いですね。
きょうはエイチ・アイエス(9603)が一時9%高となるなど、ワクチン期待のリオープン・トレードなのかJAL(9201)やANA(9202)、鉄道関連も堅調です。緊急事態宣言の解除が待たれる中、自粛疲れ・緩みで銀座など街中の人通りも増えてますし・・・。私も飛行機に乗って、旅行に行きたくなってきましたw」(国内証券トレーダー)(QUICK Market Eyes 片平正二)
■「きょうは、さすがに日銀もETF買ってくるんでしょうね?」(2/26)
「きょうは、さすがに日銀も上場投資信託(ETF)買ってくるんでしょうね? 日経平均株価が3万円を超えてたら買わないとかいう見方もあるようですが、この下げで買わないとマズいでしょう。3月の日銀会合での点検では、個別のREITの買いをやめてREITのETFを買うとの見方もあるようですね」(国内証券)
TOPIXが一時2.37%安で急落。市場からは前引け時点のTOPIXの下落率が1%を超えていないと日銀のETF買いが入らないのではないかとの見方が出ていたが、2%下げれば流石に入るだろうと期待する見方があった。もし買い出動しなかったら、市場に売り仕掛けの口実を与える恐れがある。(QUICK Market Eyes 片平正二)
■REIT決算&開示情報
2/22 <決算>インベスコ (3298) 増額修正 分配金(402円←399円 2021/04)
2/22 <決算>タカラリート (3492) 増額修正 分配金(3,100円←3,000円 2021/02)
2/25 <決算>INV (8963) 分配金 (167円 2020/12実績)
2/25 <決算>JHR (8985) 分配金 (410円 2020/12実績)、2021/12予想(270円)