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ゴールデンクロスとは何か 株価の移動平均線に注目、期間や「ダマシ」などを具体的な銘柄で解説

記事公開日 2022/11/10 15:00 最終更新日 2024/10/21 10:55 テクニカル分析 経済・ビジネス コラム・インタビュー 市場用語再点検 金融コラム

(初回公開日2021年6月25日18:00)

【QUICK Money World 辰巳 華世】株式投資において株価のトレンドや売買タイミングを教えてくれる株価チャートはとても大切です。チャートが示す売買サインに「ゴールデンクロス」があります。今回は相場が上昇するサインの一つであるゴールデンクロスについて、ゴールデンクロスとは何かといった基本から、ゴールデンクロス出現の頻度、活用方法に注意点、ゴールデンクロスの信頼性を高める方法について分かりやすく解説します。

ゴールデンクロスとは

株価の動きを示すチャートは、株式売買のタイミングを把握するのに役立ちます。相場のトレンドを知るのに役立つ指標として、一定期間の終値の平均を結んだ「移動平均線」があります。ネット証券などのテクニカルチャートで移動平均線は、短期の5日や中長期の25日、50日など自分で選択して描画することができます。長短2本の移動平均線が示す売買サインに「ゴールデンクロス」があります。なお、ゴールデンクロスは、移動平均線だけでなく、MACDやストキャスティクスなどのチャート分析でも活用されています。今回は、「移動平均線」を使ったゴールデンクロスについて紹介します。

ゴールデンクロスとは、相場が上昇局面に入った「買い」のサインとして利用されるチャートの状態のことです。ゴールデンクロスの状態は、5日(日足チャート)や13週(週足チャート)など短期の移動平均線が、25日や26週など中長期の移動平均線を下から上へ突き抜けて、短期の移動平均線が中長期の移動平均線より上にある状態のことを指します。短期と中長期の移動平均線の向きがともに「横ばい」、「上向き」の状態であればゴールデンクロスとなります。

<ゴールデンクロスのイメージ>

反対に、相場が下落傾向にあり売りのサインとして「デッドクロス」があります。デッドクロスの状態は、短期の移動平均線が長期の移動平均線を上から下に抜ける形になります。この場合、ゴールデンクロスとは逆で、移動平均線の向きがともに「横ばい」、「下向き」の状態であればデッドクロスとなります。

ゴールデンクロスやデッドクロスを確認することは、買いと売りのタイミングを判断するヒントになります。

 

ゴールデンクロスの出現頻度は?

ゴールデンクロスは、珍しいものではありません。株式相場が上昇することで「ゴールデンクロス」が確認できる銘柄は増えます。

また、参照する移動平均線の種類によっても、確認できるタイミングが異なります。日足チャートで一般的な5日と25日の移動平均線を見るのと、週足チャートで一般的な13週と26週の移動平均線を見るのとでは、ゴールデンクロスの出現タイミングが異なることがあります。

たとえば以下のグラフはトヨタ(7203)の10年間の週足チャートですが、定義通りのゴールデンクロス(赤矢印)は2回、デッドクロスは4回(青矢印)という頻度となっています。

※緑線が13週移動平均、赤線が26週移動平均

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    ゴールデンクロスの活用方法と注意点

    ゴールデンクロスは買いのサインと言われていますが、ゴールデンクロスが出たからといって必ずしも相場が上昇トレンドに入ったとは言えません。なぜなら時に実際は売買のタイミングではない「ダマシ」のゴールデンクロスが出ることもあるからです。ゴールデンクロスの線の突き抜け方には種類があり、突き抜け方によって今後の株価の動きを予測することができます。では、具体的なゴールデンクロスのパターンを見てみましょう。

    ①短期・長期の移動平均線ともに上向きで突き抜けている

    ともに上向きで突き抜けている場合は、株価が上昇する可能性が高いです。例えば株価が大きく下落、しばらく横ばいで推移した後などにこのタイプのゴールデンクロスが出ます。長期の移動平均線がじりじりと右肩上がりになり始め、短期の移動平均線が突き抜けてくる形になります。この場合、長いこと横ばいで推移していた株価が足元で上昇し始めており、何か新しい買い材料などが発表された可能性があります。

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      ②長期線が下向きの状態で突き抜けている(厳密にはゴールデンクロスではない)

      この場合は、①の場合よりも信頼度がやや下がり、「ダマシ」となることも考えられるので注意する必要があります。例えば、株価が急落後、反発して切り返した「V字」型の相場であらわれた移動平均線の交差になります。この場合だと、足元の株価は底を付け、V字回復傾向にあるものの、長期の移動平均線が最初の急落の影響を受けてまだ下落基調の状態で、それを短期線が突き抜けることになります。この場合は、上記の定義でいえば、厳密にはゴールデンクロスではありません。

      トレンドがはっきりしない時期のゴールデンクロスは「だまし」が多くなる傾向があります。一般的に移動平均線の交差する角度が緩やかな場合は、信頼性が低く、角度が急な方が信頼性が高いと言われています。また、短期の移動平均線を利用する場合は、注意が必要です。移動平均線は平均を取る期間が短いほど動きが激しくなるので、短期移動平均線は、中長期よりゴールデンクロスが発生する機会が増えます。

      この様に、どのように突き抜けたかによってもその後の株価の動きに影響があります。ゴールデンクロスだから買いサインだと安易に判断するのではなく前後の状況やその他の情報を含め慎重に分析することが必要です。

       

      ゴールデンクロスの信頼性を高めるには

      株式相場は様々な要因で動きます。チャートはあくまで過去の結果を描画したもので未来を描画したものではありません。過去の描画をもとに、新しい情報を加えて、こうなりそうだとこの先の株価を予測する時に役立てるものです。なので、チャートだけを見て判断するのではなく、企業の直近の動向などもチェックする必要があります。新しい製品の開発状況など企業の動き、人気度・注目度などの情報収集をすることでゴールデンクロスが起こった理由を確認することができます。また、株価が下落する懸念点なども併せて確認しておくことでゴールデンクロスのサインがダマシとならないか見極めるヒントになります。

      さきほどのトヨタのチャートを見ても、ゴールデンクロスは長期で見れば上昇の起点になっているように見えますが、必ずしも一本調子で上がっているわけではありません。2012年はアベノミクスの開始、2016年は英国のEU(欧州連合)離脱の混乱が一服した後、9月に日銀が長短金利操作付き量的・質的金融緩和を採用、11月に米大統領選の投開票と市場の不安材料が消化されていく過程のタイミングでした。逆に、この10年は金融緩和が相場の下支えとなっていたこともあってか、デッドクロスが発生しても、半年ほどで株価は上昇基調に転じており、結果としてはすべて「ダマシ」となっています。

      株式相場は様々な要因で動いているので、ゴールデンクロスやデッドクロスだけで判断するのは難しいです。ゴールデンクロスやデッドクロスを単独で使うのではなく、他の情報やチャート分析と合わせて総合的に判断していくことが大切です。

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        まとめ

        ゴールデンクロスは短期移動平均線が長期移動平均線を付き抜ける形で買いのサインの一つです。ただ、時にダマシもあるので注意が必要です。ゴールデンクロスの後に必ず相場が上昇するとは限らないので、チャートだけでなく、企業の動向や実際の相場の動きを見ながら株価が上昇するかの分析をしましょう。

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        著者名

        QUICK Money World 辰巳 華世

        2003年にQUICKに入社後、15年間勤務。約5年にわたり日本経済新聞社、日経QUICKニュース社(NQN)にて記者職に就く。QUICK退社後、フリーランスライターとして2020年より「QUICK Money World」に寄稿。


        投資経験 3~10年
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