【日経QUICKニュース(NQN) 中山桂一】東京証券取引所の再編に伴い新たに3市場がスタートした。東証株価指数(TOPIX)やマザーズ指数といった指数は引き続き算出されるが、新市場の全体の動きをリアルタイムで示す指数は存在しない。とりわけ中規模の企業が集まる「スタンダード市場」の銘柄が投資家から見放されかねない。
■1日1回
「スタンダード市場の指標は一体何を見ればよいのか分からず、困惑している」(ネット証券)、「スタンダード市場の指数は1日に一回の更新なのですか?」(国内証券トレーダー)――。新市場が4日に始まったが、関係者からは一様に戸惑いの声が聞かれる。
再編で市場の区分は「プライム」「スタンダード」「グロース」の3つになった。プライム市場は1839社、スタンダード市場は1466社、グロース市場は466社となった。流動性が高く多くの投資家の投資対象となるプライムが注目されやすいが、スタンダード市場には全市場の約4割の企業が集まる。東証1部からあえてスタンダードを選んだ企業も338社にのぼる。
新市場の誕生に伴い「東証プライム市場指数」「東証スタンダード市場指数」「東証グロース市場指数」の3指数の算出が始まった。しかし、これらの3指数は1日に1回の算出で、15時30分以降に公表される。通常の指数なら始値、高値、安値、終値といった「4本値」があるが、3指数は終値のみ。過去に遡って算出されることがないため、連続性もない。
■「敬遠されかねない」
市場の動きを映す株価指数としては、旧東証1部の全銘柄の値動きを示すTOPIX、旧マザーズ市場全体を示すマザーズ指数が継続して算出されている。市場関係者が引き続き注目するのは日経平均株価に加え、TOPIXやマザーズ指数だ。
旧東証2部の動きを示していた東証2部指数や、旧ジャスダック市場の動きを示していた日経ジャスダック平均の算出は終了した。スタンダード市場には「東証スタンダード市場TOP20」という15秒間隔で算出される指数はある。旧東証1部の新生銀行(8303)や日本オラクル(4716)、旧ジャスダックの日本マクドナルドホールディングス(2702)など時価総額や流動性の高い20銘柄で構成されており、スタンダード市場の全体の値動きを示すものとは言えない。
市場再編の狙いは企業の特色を市場ごとに明確にし、投資家の利便性を高めるものだったはずだ。スタンダード市場の現状の株価指数からは相場の温度感が伝わらない。市場では「海外投資家を含め多くの投資家からスタンダード銘柄が一層敬遠されかねない」(国内金融機関)との指摘が出ている。