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移動平均線とは何か 計算方法や見方を紹介、売買の目安はどこ?

移動平均線とは何か 計算方法や見方を紹介、売買の目安に活用

【QUICK Money World 片岡 奈美】株式投資を始めた皆さんは「テクニカル分析」なんて言葉をよく耳にされるかもしれません。日々刻々と変化していく株価の方向性を読み取ったり、売り買いのタイミングを見計らったりするのに役立つとされる分析方法はいくつもありますが、その中でも最もよく知られ利用されている「移動平均線」について、ここでは少し紐解いてみたいと思います。

移動平均線とは

移動平均線とは、ある期間の価格から平均値を計算し、それを折れ線グラフ(チャート)にしていったものです。毎日、その日を含めた過去数日間や数週間などの一定期間の価格を計算していくため、平均値が少しずつ移動していきます。

移動平均線はテクニカルチャートといわれるものの一つで、相場のトレンドや価格の方向性を見る際の参考となります。凸凹の出やすい日々の値動きを平均値としてならして眺めることで視覚的にも流れを把握しやすくなるでしょう。ただし、過去の数値を元に算出するため、実際の価格変動に対してはやや遅行する指標であることは念頭においておきましょう。

 

移動平均線の作り方(計算の仕方)

 皆さんが日々見ていらっしゃる株価のチャートにはすでに「移動平均線」が表示されているかもしれません。ここでは、どのように算出されているのかを改めて確認していくことにしましょう。

移動平均線はある一定期間の値を平均化して、それを結んで折れ線グラフの線にしたものです。算出の手順としては、

    • 見たい移動平均の期間を決める
    • 求めたい期間のもっとも古い値から直近の値までの平均値を求める
    • 算出された値をグラフにして線で結ぶ

となりますが、実際の株価を用いて移動平均線を描いてみましょう。

トヨタ自動車(7203)で、2022年2月1日からの株価を用いて5日移動平均線を描くとします。まずは営業日ベースで5日間の終値の平均値を求めていきます。1日から5営業日後(7日)までの終値の平均値を求めると、2269円40銭となります。これが7日時点の直近5日間の平均値になります。同じように実際の株価をもとに平均値を出していくと以下のようになります。 

トヨタ自動車を例にした営業日ベース5日間の終値の平均値

これを見やすく折れ線グラフにしたものが移動平均線です。

計算した値を描いた折れ線グラフ

移動平均線の見方

移動平均線の見方においてまず重要になるのは、向き(方向性)角度(勢い)です。上を向いていれば株価が上昇基調にあり、下を向いていれば下降基調にあることを示します。どちらともいえない場合は、いわゆる「もみ合い」と言われる局面です。合わせて移動平均線の角度が急であればあるほど、勢いがあり、流れも続きやすくなるとされています。

さらに、現在の価格が移動平均線に比べて上か下か、という点も確かめましょう。上側にあれば過去の平均値よりも高く、買いの勢いが強まっていると読み取れます。下側にあるようなら、相場の雰囲気としては弱気に傾き、売りが膨らんでいる状況です。

また、移動平均線が株価の推移に対してどのような役目を果たしているのかも気にしておくと役に立ちます。株価が下がってきたときに下値を支える「下値支持線」や、価格が上がってきたときに押し戻してくる「上値抵抗線」として見られることがあります。下値を支えて株価が反発を見せるようであれば買いのサイン、上値を抑えて株価が伸び悩むときには売りのサインなどと捉えることもあるからです。

上値抵抗線と下値支持線

移動平均線でみる売買の目安、グランビルの法則とは?

では実際に移動平均線を使ってどうやって売り買いのタイミングを見計らえばいいのか。そのいくつかの活用方法をみてみましょう。

1本の移動平均線と株価の乖離(かいり)などから株価の先行きをみる「グランビルの法則」という投資理論があります。移動平均線が長期間下落したあと、株価が上昇に転じて移動平均線を下から上に突き抜けたときは買いの目安など、売り買いそれぞれ4通りずつ、合わせて8つの法則で構成されています。

グランビルの法則

また、移動平均線を複数組み合わせた分析手法もあります。移動平均線は計算する期間が長いほど緩やかなカーブを描き、直近の価格変動の影響を受けにくくなります。そこで、2~3本の期間の異なる移動平均線を組み合わせて、売り買いの目安を判別する方法もあります。

テクニカル分析をする際には株式市場では、短期・長期として1週間程度(5日)と1ヶ月程度(25日)を組み合わせたり、短期・中期・長期として5日と25日、75日や100日などを組み合わせたりする例がみられます。分析したい期間に合わせて様々な組み合わせが可能です。

チャートと移動平均線の組み合わせ

長期と短期の2本の期間の移動平均線を組み合わせて相場の反転時期を探るのが「ゴールデンクロス」「デッドクロス」と呼ばれる方法です。

「ゴールデンクロス」は短期の移動平均線が長期の移動平均線を下から上に突き抜けて交差するもので、長期的なトレンドに比べ短期的な値動きが強く上昇している場合に出現する「買い」のサインです。

「デッドクロス」はその逆で、短期の移動平均線が長期の移動平均線を上から下に突き抜けて交差するものです。長期的なトレンドに比べ、短期的には相場が強く下落している場合に出現する「売り」のサインです。

2本の組み合わせ_ゴールデンクロスとデッドクロス

<関連記事>
ゴールデンクロスとは何か 移動平均線の期間や「ダマシ」などを具体的な銘柄で解説

長期と短期に加え、中期の3本の移動平均線を組み合わせる分析方法もあります。移動平均線は過去の数値の単純平均を並べたものですから、短期線、中期線、長期線の並びは相場が上昇基調ならば価格の高い方から「短→中→長」に、下落基調なら「長→中→短」の順になるはずです。この並びが乱れるようであれば、トレンドがはっきりしない、もみ合い局面だという判断が可能になります。2本線の組み合わせでは判断に迷う場面で活用してみると、投資のヒントが見いだせるかもしれません。

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移動平均線の弱点

移動平均線はテクニカル分析の基本として、他の数多くのテクニカル指標にも応用されているものです。移動平均線の成り立ちから理解しておけば、シンプルに相場状況を捉えるツールとして投資判断の一助になるでしょう。

ただし、移動平均線には弱点もあります。ここまで実際の日経平均株価の推移をもとにして下値支持線、上値抵抗線、ゴールデンクロス、デッドクロスなどをみてきましたが、いずれも値動きを後追いして変動していたことにお気づきでしょうか。過去の終値の平均値を連続したデータとして示す移動平均線は、相場に先行することはない指標です。直近価格の変動に比べると移動平均線の反応は遅れ、売り買いのシグナルの発出には必ずタイムラグが発生してしまうことは、この分析方法の弱点といえるでしょう。

ですので、移動平均線のみで相場の行方を予測することは困難です。日々の価格変動から上下の細かなブレを取り除き、相場状況がどうなっているのかを確認することができる指標だと意識しておいた方がよいでしょう。

 

まとめ

移動平均線を分析に活用していければ、取引手法の幅は広がります。今がどういう局面の相場か、相場のトレンドが上向いているのか下向いているのかといった状況の確認ができるうえ、売り買いの目安として用いることもできるでしょう。ただ、相場に先んじて何らかのシグナルを発することはありません。テクニカル分析には一長一短があり、万能なものはありません。株式投資においてはひとつの指標を過信しすぎることなく、さまざまな分析を併用して判断していくようにしましょう。

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著者名

QUICK Money World 片岡 奈美


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