【QUICK Market Eyes 根岸てるみ】5月末から新規株式公開(IPO)が相次ぐ。27日時点で14社が新規上場する予定だが、21年6月(22社)と比較すると半分程度にとどまる。このため、個人投資家の資金がIPO銘柄に集中する可能性がある。特にAI(人工知能)など最新技術を活用した企業や需給面で公募株式数が少ない銘柄は人気化しそうだ。個人投資家の資金回転が活発になり株式相場を下支えするとの期待もある。
■トリプルアイズ
31日は自社開発した人工知能(AI)エンジン「AIZE(アイズ)」を用いた画像認識サービスなどを手がけるトリプルアイズ(5026)が東証グロース市場に新規上場する。画像認識の中でも顔認証が得意で、顔認証による従業員の勤怠管理や決済、さらにはマーケティングなどのサービスを展開する。同社によると、正面の静止画像であれば認証率は99%の上り、マスク着用時の本人確認が可能でAIエンジンでは感情も推測できるという。
2022年8月期の売上高は前期比22%増の25億9500万円、純利益は3.6倍の1億3800万円の見通し。今期は大幅な増収増益見込みで売上高収益率も前期から上昇るすもよう。公募株数が34万7500株と少ないこともあり、需給面から初値が上昇する可能性がある。( ⇒トリプルアイズのIPOレポートはコチラ)
■ANYCOLOR
6月8日に東証グロース市場に新規上場予定のANYCOLOR(5032)は事業内容から個人投資家の間で人気化しそうだ。同社はアバター(分身)の仮想キャラクターによる動画配信「VTuber(バーチャルユーチューバー)」に出演するグループ「にじさんじ」を運営する。「にじさんじ」には約150人(4月時点)のVTuberが所属している。ライブストリーミングだけでなく、グッズ販売やイベント開催なども手がける。22年4月期は売上高が前期比74%増の132億円、税引き利益はおよそ2.6倍の24億円を見込む。
公募株数は5万株と少ないが、オーバーアロットメントを含む売り出しは128万8600株と多く需給面で初値を重くする公算がある。(⇒ANYCOLORのIPOレポートはコチラ)
■専門分野で強み持つ企業も
そのほか、近視やドライアイなど目の治療薬の研究開発などの坪田ラボ(4890)、マイクロ波技術のライセンスや共同事業を手がけるマイクロ波化学(9227)といったユニークな企業も上場。DX・AI技術を活用したM&A仲介事業のM&A総合(9552)、パーキンソン病専門の有料老人ホームの運営などのサンウェルズ(9229)といった専門分野で強みを持つ企業も上場する。
東証マザーズ指数の27日の終値は645.11と、約2年ぶりの安値圏での推移が続く。信用取引で買った株式の含み損益の度合いを示す信用評価損益率は過去の水準と比べるとまだ高い水準にある。
しかし、投資部門別株式売買動向(東京と名証の合計)をみると、個人投資家は年初から1兆円ほど日本株を買い越しており、個人の逆張り投資は健在といえる。明日からのIPOラッシュを機に個人による資金回転が活発になれば、日経平均の下値は限られそうだ。