5月下旬は、①インフレ率の鈍化と、②米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨に、A.「0.75%」の利上げへの言及がなく、B.「多くの参加者は、金融緩和の解除を早めることによって、今年終盤には、委員会が、引き締めの効果と、あとどの程度の政策調整が必要になるかを評価するのに良い状況に立てる、と判断した」との文言が「今年後半の利上げ見送りの可能性も含むものである」との見方につながったこともあり、金利が低下し、幅広い資産が上昇しました。
筆者は、「インフレは、今後数カ月についても、今後数年についても、誰にもわからない」と考えており、インデックスや成長株式への「投資再開」というよりも、①割安かつ、②業績が伸びそうで、③インフレにも耐性があるセクターを中心に保有を増やすほうが安心と考えています。
2つの物価指数を見ると、「インフレはまだわからない」が答えになる
【次の図】のとおり、CPIとPCE価格指数の2つのインフレ率(食品とエネルギーを除く)を「前年同月比」で見ると、ここもとインフレ率は鈍化していることがわかります。
しかし、【次の図】のとおり、2つのインフレ率を「前月比」で見ると、まだ鈍化は確認できません。足元の物価上昇の「勢い」(モメンタム)を見るならば、「前月比」が、より適切な指標と考えられます。
その「前月比」も例えば、年後半には鈍化していくかもしれませんが、【次の図】に示すとおり、1970年代のインフレ率は、2度鈍化をしながら、「尻上がり」に上昇しています。最近のインフレ率を、2パターンで当時に重ねてみたものが、【オレンジ】と【水色】のラインです。このとおりに行くかどうかはわかりませんが、これは「反例」であり、少なくとも「インフレ鈍化派の主張をうのみにすべきではない」と言えるでしょう。
では、不確実性の高い経済情勢の下、どのセクターに投資をするのが良いでしょうか。基本的なデータに基づいて考えてみましょう。
増益率の高いセクターは「エネルギー」「素材」「資本財」「不動産」、低いセクターは「金融」「生活必需品」「公益事業」
【次の図】は、S&P 500のセクター別予想増益率です。【一番左のS&P 500全体】と比べると、「エネルギー」、「素材」、「資本財」、「不動産」の増益率が高くなっています(→不動産についても、1株利益で統一しています)。他方で、「金融」、「生活必需品」、「公益事業」の利益の伸びは低くなっています。後者2つはディフェンシブなセクターゆえ、普段より、大きな増益率は期待されません。逆に言えば、現在は、景気の勢いが強く(→景気拡大の後半にありがちなこと;それゆえにインフレ率が高い)、景気敏感セクターの増益率も高いため、ディフェンシブ・セクターにシフトするほどの状況ではないということでしょう。
利益率の高いセクターは「金融」「情報技術」「通信」「不動産」。低いセクターは「一般消費財」「生活必需品」
【次の図】は、予想利益率(マージン)を見たものです。こちらもセクター固有の要素がありますが、【一番左のS&P 500全体】と比べると、「金融」、「情報技術」、「通信」、「不動産」のマージンが高いことがわかります。他方で、「一般消費財」と「生活必需品」は、マージンが低いため、株主から利益を増やすことを求められる企業は、価格転嫁をさらに進めていく圧力にさらされていると言えるでしょう。冒頭の話に戻れば、それは、消費者物価のインフレ圧力が残る可能性を示唆します。
バリュエーションが低いセクターは「エネルギー」「素材」「不動産」、高いセクターは「一般消費財」「生活必需品」「公益事業」
【次の図】は、バリュエーション(12カ月予想PER)を見たものです。すると、(2つ上で予想増益率が高いことを確認した)「エネルギー」、「素材」、「不動産」は、高い予想増益率にもかかわらず、バリュエーションは過去対比で見て、割安であることがわかります。他方で、「一般消費財」に加え、増益率の鈍い「生活必需品」や「公益事業」はバリュエーションが過去対比で、割高になっています。
先進国株式ではどうか?エネルギー・素材が増益かつ割安。不動産(リート)なら米国。公益株は利益が低調で、バリュエーションが高い。
以下に、先進国株式について、【上】でS&P 500に関して見た3つのチャートを貼り付けます。
かいつまんで言えば、「エネルギー」と「素材」に関しては、S&P 500と同様に、増益率が高いものの、割安です。特に「エネルギー」については、気候変動の要因で投資が手控えられていることが影響しているかもしれません。加えて、足元では、イギリスなど、エネルギー・セクターに対して増税を行う動きも見られます。このあたりは、注意したいところです。
次に、「不動産(上場リートが主)」については、先進国株式の不動産セクターは過去対比割高であり、まずは米国の不動産セクター(米国の上場リート)への投資で良いかもしれません。ただし、ボラティリティの高さを許容する必要があるでしょう。
最後に、「公益事業」については、増益率が鈍く、バリュエーションも高いことは、S&P 500で見たのと同様です。
フィデリティ投信ではマーケット情報の収集に役立つたくさんの情報を提供しています。くわしくは、こちらのリンクからご確認ください。
https://www.fidelity.co.jp/
- 当資料は、情報提供を目的としたものであり、ファンドの推奨(有価証券の勧誘)を目的としたものではありません。
- 当資料は、信頼できる情報をもとにフィデリティ投信が作成しておりますが、その正確性・完全性について当社が責任を負うものではありません。
- 当資料に記載の情報は、作成時点のものであり、市場の環境やその他の状況によって予告なく変更することがあります。また、いずれも将来の傾向、数値、運用成果等を保証もしくは示唆するものではありません。
- 当資料にかかわる一切の権利は引用部分を除き作成者に属し、いかなる目的であれ当資料の一部又は全部の無断での使用・複製は固くお断りいたします。
QUICK Money Worldは金融市場の関係者が読んでいるニュースが充実。マーケット情報はもちろん、金融政策、経済を情報を幅広く掲載しています。会員登録して、プロが見ているニュースをあなたも!詳しくはこちら ⇒ 無料で受けられる会員限定特典とは