【NQNロンドン 菊池亜矢】空運大手の仏蘭エールフランスKLMの株価が低調だ。6月15日には1.23ユーロを付け、年初来安値を更新した。足元でも1.2ユーロ台で推移する。各地で新型コロナウイルスの感染対応の行動制限を解除する動きが広がるにも関わらず、空港運営の混乱が株価の重荷となっている。
同社の2022年1~3月期決算は売上高が前年同期比2倍の44億4500万ユーロ、最終損益は5億5200万ユーロの赤字(前年同期は14億8100万ユーロの赤字)に赤字幅が縮小した。移動制限が緩和され、3月に需要が急回復した。燃料価格などの上昇に対応して運賃を引き上げたのも寄与した。
5月には、既存株主に対し新株予約権を無償で割り当てると発表。規模は約23億ユーロで、新株発行で調達する資金は政府からの支援返済や債務削減に使う。
ただ、インフレ長期化やコロナ後の需要の急回復に追いつけない空港運営の混乱が不安視されている。同社のハブ空港であるパリのシャルル・ドゴール空港やアムステルダムのスキポール空港では、賃金を巡ってストライキが発生しているほか、コロナ禍での人員削減が響き、大幅な遅延や欠航が生じる事態となっている。
スキポール空港は16日、今夏の1日あたりの旅行者数に上限を設けると発表した。労働需給の逼迫で空港のセキュリティーチェックに必要な警備員の数が著しく不足しており、旅行者や職員の安全を確保できないためという。今後、すべての航空会社と乗客数削減について協議する。
英HSBCは「エールフランスKLMは夏の運航計画を減らす必要が出てくるかもしれない」と指摘する。夏季休暇シーズンに利用者数を制限すれば収益回復の足を引っ張りかねないとの懸念は強い。高インフレが旅行やレジャーなどの消費意欲を落ち込ませるとの見方も株価を抑えている。