【日経QUICKニュース(NQN) 池田幹】6月の新規株式公開(IPO)が30日のエイビック(9554)で一巡した。同社の初値は1266円と公開価格(1020円)を246円(24.1%)上回ったが、今月上場した12社のうち4割にあたる5社で初値が公開価格を割り込む「公募割れ」となった。IPOは積極的な買いを集めやすいとされるが、足元では投資家の銘柄選別が強まっているようだ。
QUICKで遡れる2019年6月以降の月ごとの上場データ(2社以上のIPOがあった月に限る)でみると、今月の公募割れ銘柄の比率はコロナショックのあった20年3月以来の高水準だった。今月の初値騰落率の平均は1.36倍で21年平均(1.56倍)を下回った。初値騰落率は公開価格(投資家の購入価格)に対する初値の上昇(下落)の割合で、当該銘柄の人気のバロメーターだ。
新規公開株は主幹事の証券会社が「適正」とみている価格より割安な水準に公開価格を設定する「IPOディスカウント」と呼ばれる商慣行があった。それが見直されていることで初値の公募価格割れが増えた可能性がある。金融情報サービスを手掛ける財産ネットの藤本誠之企業調査部長は「IPOディスカウントの見直しによって従来より公開価格が高めに設定されやすくなる。投資家にとっては新規公開株に対する妙味が薄れることを意味する」と話す。
一方、初値形成後の株価上昇が顕著な銘柄もある。今月上場のANYCOLOR(5032)は初値比91%高の9200円まで、イーディーピー(7794)は48%高の1万2130円までそれぞれ買われる場面があった。いずれも連日で東証グロース市場の売買代金ランキングの上位に顔を出している。
今月上場した12社のうち30日の終値で初値を上回っている銘柄は5社。値動きの軽さに加えて「上場後の成長イメージが描きやすい銘柄」(岩井コスモ証券の有沢正一投資調査部部長)との評価が初値形成後の株価上昇につながったとみられる。
以下に6月のIPO銘柄の初値一覧。
上場日 | 銘柄名(コード) | 30日終値 | 公開価格 | 初値( 騰落率) |
30日 | エイビック(9554) | 1100円 | 1020円 | 1266円( 24.1%) |
29日 | マイクロアド(9553) | 1035円 | 1410円 | 1290円(▲8.5%) |
28日 | ヌーラボ(5033) | 806円 | 1000円 | 955円(▲4.5%) |
M&A総研(9552) | 2484円 | 1330円 | 2510円( 88.7%) | |
27日 | EDP(7794) | 10260円 | 5000円 | 8200円( 64.0%) |
サンウェルズ(9229) | 2760円 | 1940円 | 2300円( 18.6%) | |
24日 | マイクロ波(9227) | 881円 | 605円 | 550円(▲9.1%) |
23日 | ホームポジ(2999) | 460円 | 450円 | 465円( 3.3%) |
坪田ラボ(4890) | 859円 | 470円 | 794円( 69.0%) | |
Jワランティ(7386) | 1257円 | 1640円 | 1480円(▲9.8%) | |
20日 | ヤマイチ(2984) | 770円 | 950円 | 878円(▲7.6%) |
8日 | エニーカラー(5032) | 6540円 | 1530円 | 4810円( 3.1倍) |
(注)初値騰落率は公開価格比 ▲はマイナス |