【NQNロンドン 菊池亜矢】欧州の航空機大手エアバス株が足元で上昇基調にある。株価は7月に入って19日までに14%上昇した。中国の航空会社から主力小型機「A320」を合計292機受注したと発表したのが直接のきっかけだ。今年の全体の受注機数もライバルの米ボーイングを大幅に上回っており、世界の旅客需要回復に伴って業績がさらに上向くとの期待が買いを後押ししている。
※エアバス株価と米ボーイング株価の相対チャート。(2021年末を100として指数化)
英航空データ分析のシリウムによれば、2040年までに納入される航空機の20%が中国向けで、中国を除くアジア太平洋も22%を占める。QUICK・ファクトセットによると、エアバスの売上高に占めるアジア太平洋の割合は3割、ボーイングは1割ほどだ。米中関係改善の兆しがみえない中、中国勢の需要取り込みではエアバスが有利との指摘がある。
今年に入っての受注機数もボーイングの286機に対し、エアバスは442機と圧倒的にリードしている。ボーイングもデルタ航空から主力小型機「737MAX」を大量受注するなど巻き返しているが、アジアに強いエアバスの優位が続いている。これを映し、昨年末から19日までの株価騰落率はボーイングの22%安に対して、エアバスは6%安と底堅い。
エアバスの世界市場予測によると、旅客機と貨物機を合わせた就航機数は2041年に4万6930機と20年初の2万2880機から2倍になり、今後20年間で3万9490機の受注が発生する見通し。環境重視の潮流の中、同社は燃料消費の多い大型機から、燃費のいい小型機に需要が移るとみる。
エアバスは小型機の中でも通路が1つの「ナローボディー型」に力を入れてきた。A320シリーズの最新型「A320neo」はエンジンの刷新などで従来機に比べ20%の燃費改善と二酸化炭素(CO2)の削減を実現した。昨年の年間納入機数611機のうち9割近い533機がA320neoを含むナローボディー型だ。今年も6月までに納入した295機のうち255機を占めた。
22年1~3月期の売上高は前年同期比15%増の120億ユーロ、純利益は3.4倍の12億1900万ユーロだった。納入機数の増加が収益を押し上げた。旅客数の回復に伴う顧客の需要増に対応し、A320シリーズの生産量を25年に月75機に引き上げる方針も示した。コロナ禍前の2019年に月63機以上を目指していたが、それを上回る積極的な増産計画だ。コロナ禍でいったん途切れた成長への期待が広がれば、株価の押し上げにつながっていきそうだ。