【NQNロンドン 菊池亜矢】フィンランドの電力大手フォータム株の下落が続いている。9月6日終値は約9ユーロと8月からの1カ月あまりで16%下げた。ドイツのガス・電力子会社ユニパーがエネルギー危機で深刻な経営難に陥り、フォータム株を押し下げている。
フォータムが8月下旬に発表した22年4~6月期決算は最終損益は56億8600万ユーロの赤字と、前年同期の4億7300万ユーロの赤字から赤字幅が大幅に拡大した。ロシア産天然ガスの供給削減で、ユニパーが高騰する市場価格でのガス調達を迫られ採算が悪化した。フォータムの売上高の約9割をユニパーが占める。
7月下旬にはフォータムとユニパー、独政府が協議し、独政府によるユニパーへの出資や融資枠拡大など救済策で合意した。ただ、8月下旬から天然ガス先物価格が再び騰勢を強め、不透明感が高まっている。フォータムは8月29日、同月26日時点で天然ガス先物取引で必要な担保金が50億ユーロに達し、1週間で10億ユーロ増えたと発表した。先物取引で損失が膨らみ、担保金の積み増しを迫られた。
フォータム株の51%をフィンランド政府が保有しており、市場では緊急の公的支援が期待できるとの声もある。同社は6日、フィンランドの政府系投資会社と先物の担保金の急増に備えて、23億5000万ユーロのつなぎ融資契約を結んだと発表した。
だが、ロシアの欧州向け主要パイプライン「ノルドストリーム」によるガス供給は無期限に停止され、エネルギー価格の急激な下落は見込みにくい。フォータムのマーカス・ラウラモ最高経営責任者(CEO)は「エネルギー危機は(暖房需要が高まる)冬に向けて一段と深刻化する可能性が高い」と危惧する。投資家の買いは当分見込めそうにない。