【NQNニューヨーク=川内資子】28日の米株式市場でバイオ製薬のバイオジェン(BIIB)株が急騰し、一時は前日比43.3%高の283.44ドルを付けた。27日、日本のエーザイと共同開発するアルツハイマー型認知症治療薬「レカネマブ」の第3相の臨床試験(治験)で進行を抑える効果を確認したと発表。2023年3月末までに米国での承認申請を目指す方針を示し、製品化の期待から買いが膨らんだ。
レカネマブはアルツハイマー型認知症患者の脳内に蓄積するたんぱく質「アミロイドβ」を取り除き、病気の進行を遅らせる。米食品医薬品局(FDA)から開発加速を支援する「ファストトラック」に指定され、迅速な審査が見込まれる。審査終了の目標日は23年1月に指定されており、早期の承認の期待が高まった。
28日はアナリストによる前向きな評価が目立った。ニーダムは試験結果を「考え得る最高の内容」と評価し、承認に向け「データが不十分とは思えない」と指摘した。一方、販売面での成功で重要なのは、米国の高齢者・障害者向け公的医療保険の対象となるかどうかだと分析、「レカネマブが数十億ドル規模の収益機会をもたらすかを判断するのは時期尚早」という。投資判断は「買い」、目標株価は250ドルで維持した。
パイパー・サンドラーは「臨床結果によりレカネマブの早期承認を巡る不透明感が薄れた」とし、目標株価を200ドルから280ドルに引き上げた。ただ、治療頻度が高いなど治療する上での負担が大きいことや同業のイーライ・リリーなどとの競争激化を警戒し「結果を受けて株価は急騰するだろうが、上値追いはしない」とも指摘した。
バイオジェンはエーザイと共同開発した別のアルツハイマー型認知症治療薬「アデュヘルム」が21年に米国で承認された。ただ、価格の高さや公的保険の適用が限られたことなどで販売は苦戦している。