【NQNニューヨーク=戸部実華、川内資子、川上純平】
■ノババックスが一時9%高 WHOがコロナワクチンの未成年向け緊急使用承認
29日の米株式市場でバイオ製薬のノババックス(NVAX)が続伸し、前日比1.1%高の16.83ドルで通常取引を終えた。同社が開発した新型コロナウイルスのワクチンについて、世界保健機関(WHO)が未成年の初回接種向けと成人のブースター(追加接種)向けで緊急使用を承認したと29日に発表した。業績拡大につながるとの期待から一時は8.5%高となったが、相場全体の下げに押されて伸び悩んだ。
WHOが緊急使用のリストに加えたのは、12~17歳の初回接種(合計2回)と18歳以上の追加接種向けのワクチン。WHOは2021年12月に18歳以上の初回接種用の緊急使用を承認していた。
ノババックスのワクチンは競合相手のファイザーやモデルナが採用する新技術「メッセンジャーRNA(mRNA)」を使っていない。「組み替えたんぱく」と呼ぶ従来型の技術を活用し通常の冷蔵庫で保存できるため、輸送しやすいとされる。発表を受けて、Bライリー証券は「世界的に着実に伸びているノババックスのブースター接種を後押しする」との見方を示した。投資判断は「買い」、目標株価は74ドルで据え置いた。
■ボーイングが2%高 アナリストが「最悪期は過ぎた」と指摘
29日の米株式市場で航空機のボーイング(BA)が反発し、前日比2.0%高の175.32ドルで通常取引を終えた。モルガン・スタンレーがリポートで、新型コロナウイルスの感染拡大以降に続いた事業の停滞について「最悪期は過ぎた」と指摘した。株価が本格的な上昇基調に入るとの期待から買いが優勢となった。
アナリストは「2019~21年に280億ドルのフリーキャッシュフロー(FCF=純現金収支)の赤字を記録したが、今後は黒字化する時期に入る」と指摘した。航空機を市場に供給できる会社が限られるなか、生産機数が安定して増えていく恩恵を受けるとみる。
株価は昨年末から過去1年(52週)の安値を付けた6月までに4割強下げたが、その後は5割高と相場全体を大きく上回るペースで上昇してきた。ボーイングには供給網の安定化など「課題は多い」としながらも、堅調な需要や出荷が株価を支えるとの見方を示した。投資判断は「買い」、目標株価は前日終値より24%高い213ドルで据え置いた。
■化学のケマーズが続落 業績見通しの下方修正を嫌気
29日の米株式市場で化学大手のケマーズ(CC)が4日続落し、一時は前日比4.0%安の30.17ドルを付けた。28日夕に2022年12月期通期のEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)やフリーキャッシュフロー(FCF、純現金収支)が従来予想を「小幅に下回る」との見通しを示した。業績見通しの下方修正を嫌気した売りが優勢になった。
22年12月期通期の調整後のEBITDAは14億~14億5000万ドルのレンジの下限をやや下回るといい、QUICK・ファクトセットがまとめた市場予想(14億3000万ドル)に届かない。FCFは5億7500万ドル以上との従来見通しをわずかに下回る見込みで、市場予想(6億3950万ドル)に満たない。
10~12月期に欧州とアジアで二酸化チタンの需要の弱含みが目立つほか、原材料などのコスト高が業績の重荷になる。世界のマクロ経済環境の見通しの不透明感が増すなか、23年以降の経営環境の改善に向けて「戦略的なコスト削減を進めている」と説明した。
■UPSが反発 経済的逆風は織り込み済みとの見方
29日の米株式市場で物流のUPS(UPS)が3営業日ぶりに反発し、一時は前日比2.9%高の185.19ドルを付けた。ドイツ銀行が28日、投資判断を「中立」から「買い」に、目標株価を197ドルから220ドルに引き上げた。米経済の下振れなどによる業績懸念は株価に織り込まれたとして、株価に上昇余地が生じたと指摘した。
UPSの株価は28日時点で昨年末比16%下落している。担当アナリストはUPSについて厳しい経済状況下でも堅実な収益を得られると評価し、足元の株価は「一過性の逆風を過剰に織り込んでいる」とみる。「市場では数量の成長に過度な関心が集まり、(UPSが進める)生産性向上への取り組みに目が向いていない」と分析。こうした取り組みが国内の成長が緩やかになるなかでも、収益の改善につながるとして、UPS株の先行きに「よりポジティブになるときだ」と強調した。
本文にボーイングとUPSがあるのですが、いずれも市場が厳しい局面から脱したと評してるのが興味深いです。コロナもさることながら、アメリカの景気後退も織り込んだのか…