【QUICK Market Eyes 大野 弘貴】今年も残すところ約2週間となった。米市場では主要金融機関によるS&P500種株価指数の2023年末目標が出そろった。各社の予想は下記の通りとなっている(予想降順)。
ドイツ銀行 | 4500 |
BMOキャピタル・マーケッツ | 4300 |
JPモルガン | 4200 |
エバコアISI | 4150 |
RBC | 4100 |
クレディ・スイス | 4050 |
BofA | 4000 |
ゴールドマン・サックス | 4000 |
UBS | 3900 |
モルガン・スタンレー | 3900 |
ソシエテ・ジェネラル | 3800 |
BNPパリバ | 3400 |
概ね4000近辺に集中している。11月末時点のS&P500が4080であったことから、足もとの水準比でほぼ変わらずだ。ここでは、4000超と予想した中立~強気派の見方について抜粋する。いずれも、年前半に22年の安値近辺まで下落する可能性を挙げるも、年後半にかけて力強い反発を見込んだ。弱気派の見方については別の機会に取りまとめる予定だ。
- 4500と予想したドイツ銀行は、23年1~3月のベアマーケット・ラリー継続後、米経済が景気後退入りする7~9月にS&P500は3250まで大きく下落すると予想した。一方で、株価は景気後退半ばで底を打ちし、年末にかけて回復するとみた。下振れリスクに景気後退が長引くことで株価の底打ちタイミングが後ずれする可能性が、上振れリスクに景気後退入りを回避することでポジショニングが拡大し、23年末にS&P500は5000まで上昇する可能性を挙げた。
- BMOキャピタル・マーケッツは2022年について、ここ十数年続いたゼロ金利、低インフレによる株式も債券も簡単に値上がりした時代が終わり、「現実を直視した年」であったとした上で、多くの投資家がこの現実を受け入れることができないでいると振り返った。それでも、インフレ緩和や過度にネガティブな投資家心理が是正されることで、株式には上昇余地があるとも指摘。イールドカーブの逆転や株式の循環的な弱気相場はすでに投資家に景気後退の発生を告げていることから、「今後の景気後退入りは無意味であり、その代わりに次に起こることに備えている」とした。
- JPモルガンは金融環境の引き締まりと労働市場の縮小で失業率が5%まで上昇することにより、米国では緩やかな景気後退に入ると予想した。また、S&P500は市場ボラティリティの上昇により急落する可能性があり、23年上半期にかけて今年の安値に再び接近する可能性があるともみた。一方で、年後半は米連邦準備理事会(FRB)の政策転換のシグナルが出されるにつれ資産価格が回復し、年末までに株価は上昇するとの展望を示した。
- エバコアISIは、23年のS&P500の1株利益(EPS)が前年比7%減の206ドルと見込んだ。それでも、経済と収益後退が現実となる23年半ばに安値をつけた後、株式市場は反発すると予想。同時期での底打ちは過去の弱気相場における長さ・深さと一致する時点にあたるほか、過去に株式市場はEPSが低下した年に上昇した前例(75年、91年、90年など)があるとも指摘した。景気後退入りしない強気シナリオでは、EPSが237ドル、PER(株価収益率)19.4倍でS&P500が4600まで上昇する一方、FRBの政策ミスが引き起こす弱気シナリオではEPSが15%減、PERが13倍の2450まで下落するとみた。
なお、参考として以下に昨年時点の予想もまとめておく。今となっては強気派に逆風が吹いた一年だったと言えそうだ。
クレディ・スイス | 5200 |
ゴールドマン・サックス | 5100 |
RBC・キャピタル | 5050 |
JPモルガン | 5000超 |
UBS | 4850 |
BofA | 4600 |
モルガン・スタンレー | 4400 |