【NQN香港=須永太一朗】中国経済の見方を巡る強弱感が対立している。市場予想を上回る1~3月期の実質国内総生産(GDP)を受け、2023年の年間成長率について市場では、政府目標を大幅に上回る「6%台」への引き上げが続出している。一方、中国本土市場では株高の勢いが一服。株式より相対的に安全性が高いとされる国債の利回り低下(価格の上昇)基調が続くなど、景気回復の持続性について懐疑的な見方も多い。
■米金融大手、相次ぎ6%超の予想
バンク・オブ・アメリカは21日、中国の23年の成長率を6.3%と従来の5.5%から引き上げた。国内の銀行が2022年末以来、戦略的に重要な産業に対して低利で大規模な融資をしていると分析。「与信拡大が投資の伸びを刺激し、消費回復も進む」とみる。
前週はJPモルガンが6.4%に、シティグループが6.1%にそれぞれ引き上げるなど、米金融大手を中心に23年の成長率について「6%超」の予想が目立つ。ゴールドマン・サックスも3月に6.0%との予想を出している。
4月18日発表の1~3月期のGDPは前年同期比4.5%増と、高めでも4%程度だった市場予想の平均を上回ったことが、強気見通しが広がる流れを作ったとみられる。
一方、金融・資本市場の景色はやや異なる。上海総合指数はGDPなど主要経済指標の発表があった18日に3393と約9カ月ぶりの高値を付けたが、24日午前は3300を割る水準まで押し戻された。金融仲介会社タレットプレボンによると、中国の10年物国債の利回りは1月下旬につけた2.94%台前半からじりじりと下がっている。4月24日午前には2.83%台前半と、22年11月下旬以来の低さになった。
■年後半に反動減か、自動車・鉄鋼生産に懸念も
前年同期に上海市でロックダウン(都市封鎖)があった影響を踏まえると、1~3月期に続いて4~6月期も成長が加速する公算が大きい。ただ、3月に前年同月比で14.8%増となった輸出(米ドル建て)については「短期的な上振れの反動や、米景気減速の影響が出やすい」(大手運用会社)との指摘がある。
三井住友DSアセットマネジメントは、中国で7月1日から自動車の排ガス規制が強化されることを見据えた駆け込み的な生産・販売が、今後一巡するとみる。中国政府が近く、鉄鋼生産量を抑制する計画を導入する可能性もあり、あわせて23年後半の中国の成長率鈍化につながると分析。年間の成長率は5.3%との見方を維持している。
中国の23年の経済成長率については、5%前後の政府目標が示された当初から「保守的すぎる」「慎重ながら妥当な水準」などと評価が分かれていた。ここにきて予想に一段とばらつきがみられる中国経済の行方を巡る市場の気迷いは当面、続きそうだ。