【日経QUICKニュース(NQN) 大沢一将】2023年3月期決算のトップバッターとして注目されたニデック(旧日本電産、6594)は決算発表を受け、25日の株式市場で前日比292円(4.4%)高の6916円まで上昇する場面があった。24年3月期(今期)は減収ながらも大幅増益見通しで、今期のV字回復予想を好感する買いがひとまず優勢となった。
今期の連結純利益(国際会計基準)は前期比3.7倍の1650億円と、アナリスト予想の平均であるQUICKコンセンサスの1616億円(21日時点、18社)を上回った。ここ数年は期初の会社計画が市場予想を下回る傾向にあり、今回の見通しに市場はひとまず安堵した。一見すると、大幅な増益にみえるが、前期に欧州の車載事業を中心に757億円の「構造改革費用」を計上した反動が大きい点には注意が必要となる。
今後の株価のカギを握るのは車載事業の動向だ。前期に300億円近い営業赤字を出した電気自動車(EV)向けのモーター事業について、今期の黒字化を見込む。EVのモーターとインバーター、ギアを一体化した駆動装置「イーアクスル」で従来のものより収益性の高い「第2世代」の製品を投入する。
イーアクスルの前期の販売台数は約34万台で、1月の四半期決算発表時に示していた約42万台には届かなかった。主戦場の中国のEV市場は激しい競争環境にある。新型イーアクスルの投入で「取られたシェアを倍返しで取りに行く」(早船一弥常務執行役員)。中国汽車工業協会によると、3月の国内の新車販売のうち、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)など新エネルギー車は前年同月比35%増の65万3000台だった。23年通年は前年比3割増の900万台と高成長が続く見通し。「中国ではミドルマーケットが成長している。顧客(の自動車メーカー)も強気の見通しだ。そこを取っていく」(早船常務)と意気込む。
EV向けのモーター単品での販売にも踏み切る。モーターはニデックの祖業でコスト面などで優位性があるとみられ「単品で売った方が(イーアクスルを売るよりも)はるかに利益が出る」(永守重信会長)。SMBC日興証券の桂竜輔シニアアナリストらはリポートで、「柔軟にイーアクスルの台数成長ありきの戦略からモーター単体など部品強化の方針が示されたのは評価できる」と指摘した。欧米ではイーアクスルを内製化する自動車メーカーも多い。部品供給の強化で完成車メーカーのニーズに応え、不振を極めていた車載事業の立て直しを図る。
経営陣の強気発言に対し、市場では「マクロ環境が良くないなか、きちんと数字を出せるのか確認したい」(岩井コスモ証券の斉藤和嘉シニアアナリスト)。金融システム不安が根強い米景気の悪化も懸念され、家電・商業・産業用モーター事業の先行きも気がかりだ。会社計画に基づくPER(株価収益率)は25日時点で24倍台と「同セクター内での割安感は乏しい」(国内証券のアナリスト)との指摘もある。
今年に入り、日経平均は24日までに10%上昇した一方、ニデックは3%安に沈む。株価低迷が続くなかでの今回の増益見通しでいったんは買い戻しの動きが優勢となった。だが、ニデック株が持続的に上昇するためには、7月の4~6月期の決算発表で確かな実績の確認が必要となるのは間違いない。永守会長は「経営は結果、数字だ。いろいろ口でいっても仕方ない。成長神話を取り戻す」と話していた。今後の四半期業績で投資家の信頼を回復できるのかどうかが注目される。