【日経QUICKニュース(NQN) 聞き手は大沢一将】「ひふみ投信」シリーズなどで知られる運用会社のレオス・キャピタルワークス(7330)が4月25日、東証グロース市場に上場した。同社の会長兼社長・最高投資責任者(CIO)の藤野英人氏が、足元の相場や投信業界を取り巻くテーマについて語った。(取材は4月27日)
――「ひふみ投信」のマザーファンドは年初、金融株の比率が高かった。足元の相場環境をどうみますか。
「日本のデフレマインドは恐ろしく強烈だった。日銀の黒田前総裁にしろ、植田現総裁にしろ、インフレとともに金融政策を変えるかと思ったが、正常化は私の想定より後ズレしそうだ。企業サイドでは人手不足の実感が強く、悪化の一途をたどることが目に見えている。供給制約による物価上昇は続くだろう。省力化やロボット、デジタルトランスフォーメーション(DX)、人材・労働関連などへの投資が有望だ」
――東証の低PBR(株価純資産倍率)企業への改善要請をどうみていますか。
「日本が小型から大型まで、米国などと比べ低PBR株が目立つのは、国内企業の『キャッシュをため込んで挑戦しない体質』や、投資家向け広報(IR)の消極姿勢が一因だ。東証の対応は日本にとって良いことだが、まだ手ぬるい。(再挑戦させる)『チャレンジャーマーケット』でも作って、プライム市場から退出させたらいい。投資家としては、変化しようと努力している企業があればチャンスだ」
――4月25日の上場会見では「東証グロース市場で株主数ナンバー1の企業にしたい」と語りました。レオス株に投資する上でのポイントは。
「資産運用業界は成長産業であり、なかでもレオスはイノベーティブな会社であると自負している。少額投資非課税制度(NISA)の口座数は1000万口座を超え、増加が続いている。24年からの新NISA制度を追い風に、伸び率は加速するだろう。金融教育を進めて『長期で運用するのが得だ』という感覚の人が増えることも重要だ」
「この業界には『ブランド品』がなかったことがずっと不思議で、それが起業した理由のひとつ。外国株に投資する『ひふみワールド』は運用実績がなかったにもかかわらず、『ひふみなら』という投資家の資金が集まり、世界株ファンドとして残高ベースで日本有数の存在となった。良好なパフォーマンスを出し、ひふみに対する信用と信頼を築いていく」
「岸田文雄首相が4月26日、金融庁に運用会社の抜本的な改革を進めるよう指示したと伝わった。外国株の運用を海外の運用会社に丸投げしていること、経営トップがグループ内の人事で決まり、在任日数が短いことなど、従来型の運用会社に厳しい指摘をしたというが、レオスにそうした問題はない」
――「ひふみ投信」のマザーファンドの足元のパフォーマンスは、東証株価指数(TOPIX)と比べると低迷気味です。
「(レオスが得意とする)成長株や中小型株が不調だったのが要因で、新規株式公開(IPO)銘柄のパフォーマンスも相対的にさえなかった。成長株が上昇する相場になるかがカギだ。足元では大型株の比率を上げているが、これを下げて中小型株にしっかりと投資する。相場が軟調な時も(企業などに)足を運ぶことは欠かさないようにする。これまで(注目企業の株価が)2~3年後に何倍にもなるのを多く見てきた」