【NQNロンドン=菊池亜矢】オランダのビール大手ハイネケンの株価が軟調だ。8月2日に87.50ユーロと年初来安値を付け、その後も安値圏で推移する。収益性の高いアジア太平洋地域を中心にビール販売量が減少しており、値上げによる需要鈍化への警戒が高まっている。
※ハイネケンの株価推移
7月末に発表した23年1~6月期決算は、売上高が前年同期比6%増の174億3600万ユーロ、純利益が9%減の11億5600万ユーロだった。値上げやコスト削減が寄与したものの、原材料費や人件費の上昇が響いた。市場が注目する実質ベースの営業利益は9%減の19億3900万ユーロと、QUICK・ファクトセットが集計した市場予想(20億8570万ユーロ)を下回った。
主力のビールの販売量は1~6月期に前年同期から5.6%減少した。4~6月期は7.6%減と1~3月期(3.0%減)から一段と落ち込んだ。1~6月期の地域別では、経済減速の影響などで全地域が減少し、なかでもアジア太平洋地域が13.2%減と大きかった。ビール以外を含めた販売量は5.4%減となった一方、全体の平均販売価格は11.8%上昇し、数量の減少を大幅な値上げで補った形が鮮明だ。
今後の見通しについては、生産コストや輸送費のほか、エネルギーや水など原材料費の上昇圧力が緩和する中で、販売価格の上昇は穏やかになり、販売量の減少率は1桁台前半まで徐々に縮小すると見込む。もっとも、23年12月期通期の業績については、上半期までの業績を踏まえて、実質営業利益が1桁台半ばの成長と、1桁台半ばから後半としていた従来予想から下方修正した。
英金融サービスのハーグリーブス・ランズダウンは「インフレ圧力が打撃となり利益を圧迫している。この先は、消費者が値上げにどれだけ耐えられるかが業績を左右しそうだ」とみる。
ハイネケンは低アルコールやノンアルコール製品の販売が好調に推移するなどの前向きな材料も示した。健康志向の高まりを追い風に、ノンアルコールビール「ハイネケン0.0」は米国とブラジルの主要市場で数量が2桁増になったという。それでも、株価は決算発表後に大きく下げた後も戻りが鈍いままだ。市場では、値上げで落ち込んだ需要を取り戻すには時間がかかるとの懸念もあり、ハイネケン株にはしばらく積極的な買いが入りにくそうだ。