【NQNロンドン=菊池亜矢】英小売大手マークス&スペンサーグループの株価が堅調に推移している。8月16日は3日続伸し、一時232.20ペンスと2022年1月以来1年7カ月ぶりの高値を付けた。直近の取引実績が好調だったほか、足元では英国で消費者物価指数と賃金の上昇率が逆転した。消費者の実質購買力の回復による収益増加への期待も株価を押し上げている。
15日発表した直近19週間(4月2日~8月12日)の既存店売上高は、食料品が前年同時期に比べ11%以上増えた。高品質を売りにしながら値ごろ感を出す工夫をした独自ブランドで80品目以上の価格を見直したのが奏功した。衣料品や家庭用品は店舗販売が好調で、6%以上増加。販売予定の在庫は計画を下回った。
同社は電子商取引(EC)の強化に加え、実店舗とデジタルの融合で顧客の利便性を高めるオムニチャネル戦略を推進。成長戦略の一環として、1月には英国全土に、より大型の改良した店舗を開くために4億8000万ポンドを投じる計画を発表した。立地や規模を含め適切な店舗配置を進める店舗ローテーション計画を加速。新たな顧客層を獲得するため、最新の衣料品や商品展開に注力するなど、構造改革にも取り組んできた。
23年3月期通期の売上高は前の期比10%増の119億8800万ポンド、純利益は19%増の3億6340万ポンドだった。ドイツ銀行は15日、衣料品と食品の両方に適した店舗モデルを見いだしたことで今後も好調な収益が見込まれると指摘。構造改革の進展により「投資家は新たな目線で同社(への投資)を再検討すべきだ」と評価し、目標株価を235ペンスから260ペンスに引き上げた。
英国では消費者物価指数(CPI)の伸び率が賃金の伸びを上回る状況が続いていた。だが、直近の統計では4~6月の平均賃金上昇率が前年同期比7.8%となる一方、7月のCPIは前年同月比の上昇率が6.8%と、両者の関係が逆転した。「実質賃金がプラスの領域に戻ったのは、個人消費にとっては朗報。消費者心理の先導的な企業といえる同社の好調ぶりは買い物客の回復力を示している」(英運用会社)との指摘もある。