【NQNロンドン=蔭山道子】10月19日の英株式市場で、害虫や害獣駆除の世界大手である英レントキル・イニシャルの株価が急落した。同日発表した2023年7~9月期の販売状況で、売上高の過半を占める北米市場での需要鈍化に言及したことがきっかけだ。事業買収の効果などで7~9月期は大幅増収を達成したにもかかわらず、投資家の視線は厳しい。
「顧客の定着率は底堅いが、経済的な背景や需要軟化で住宅向けで新規顧客の獲得が苦戦した」、「短期的な不透明感から、通期の北米の成績は従来見通しをわずかに下回りそうだ」。19日の発表資料に並んだ北米市場に関するこうしたコメントに、市場参加者は反応した。
23年12月期通期の北米市場での調整後の営業利益率の見通しを18.5~19.0%と、従来の約19.5%から引き下げた。19日の株価は一時467.70ペンスと前日比で2割下げ、1年ぶりの安値に沈んだ。
同社は22年10月、米国の同業ターミニックスを約67億ドル相当で買収。それ以外にも買収を繰り返して事業や収益の規模を拡大してきた。23年7~9月期の売上高は13億8200万ポンド(約2500億円)と、前年同期比で53%増えた。ただ、合併・買収や為替などの影響を除く「オーガニック」でみると増収率は4.3%。23年1~6月期実績(同5.9%増)などを踏まえると「期待をやや下回る」(モルガン・スタンレーのアネリース・バーミューレン氏)との声が出る。
同社は80を超える国・地域で事業を展開。ネズミやシロアリなど害獣・害虫を駆除するペストコントロール事業を柱に、企業向けの衛生管理なども手掛ける。直近の売上高を地域別にみると北米が6割、欧州・中南米が約2割、それ以外の英国、アジア、太平洋地域などがあわせて2割弱となっている。
今年3月、22年12月期通期決算が市場予想を上回る内容となったのを機に、株価は水準を大きく切り上げた。米国で害虫駆除の大手だったターミニックスの買収を完了してから1年。市場では、さらなるシナジー効果を期待して「消費者の需要は軟化したものの(投資に)強気の姿勢は変えない」(オッペンハイマーのアナリストチーム)との声も根強い。